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いつも見ている彼は 2
「お前、いつも見てるな」
後ろを見ると彼がいた。
「お前、A組の桜井だろ?桜井 悠 」
僕はびっくりして何も言えずにいた。
なんで、僕の名前を知っているんだろう?
そう思っていると、急に冷たい風が吹いてきて、僕は埃とともに舞った風を吸い込んで思い切り咳き込んでしまった。
「大丈夫?」
「……ありがとう……大丈夫だよ。あの……知ってるんだ?僕のこと」
「知ってるよ。お前、有名だもん。いろんな意味で」
彼はそう言ってニコっという感じに笑った。
「いろんな意味で?って?」
どういうこと?
「いいじゃん。そんなこと」
「そんなこと……?」
僕はきっとその時、吃驚したような感じで目を見開いていたんだと思う。
「……お前でっかい目だな」
くすくす笑わてしまった。
「俺の名前は…」
「知ってる僕も君のこと。望月 大輝 でしょ?」
「ふうん。俺も有名人ってことか?ダイキって呼んでいいよ?」
「有名だよ。だって、野球部じゃいちばん人気だし。女の子に一番モテてるし」
知ってるに決まっている。だって、僕はずっとみていたから。こんな風になれたらいいなっていつもグラウンドを走る大輝を見ていた。
「女にモテるねえ。だけどさ、あいつら全然俺のことなんてわかっちゃないからな」
大輝が遠くを見て言った。
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