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いつも見ている彼は 3
また冷たい風が吹いてきた。やっぱり今日は寒い。咳き込みだして話なんて出来なくなってしまった。
せっかく大輝と話しているのに。
「おいホントに平気?」
「うん大丈夫。もう、帰るよ。風が冷たいし」
ふらつきながら座っているベンチから立ち上がった。だけど、咳き込んだせいか苦しくて素早く歩けない。
季節の変わり目のこの時期は朝夕の気温の変化が大きくてホントしんどい。
すると、大輝が僕をそっと掴んで支えてくれた。
「ありがとう……ごめん。ほんと。あ、でも、今日はなんで帰るの?部活は?」
「ああ、今日は、母親が入院したから、色々病院へ持って行くんだよ」
「入院?」
「っても、大した事ないんだよ。階段から足すべらせて、ちょっと、足ひねって、少し折れたみたいなだけだし。他はピンピンしてるから、アレもってこい、これもってこいってうるさくってさ。今日これからコレもって行くんだよ」
大輝がでかいボストンバックみたいなのを出した。高校の近所の病院だから直接行くんだ。と言っていた。
…なんだか、大輝と向かい合ってると、苦しい…。
息がなんだか思うように出来ない。
これは、僕が緊張してる?
それとも、何?
喉の奥が、風が吹くような音がする。
やばい、冷えすぎて、埃も吸い込んだから喘息の発作が起きてきたよ。
肩で息をしないと歩けない。
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