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第5話 濡れる夢【輝】

 江川(えがわ)係長から、賢太郎(けんたろう)の真面目な人柄について聞き、自分の軽はずみな行動を反省したその夜、(あきら)蠱惑的(こわくてき)な夢を見た。  周囲の雰囲気や着ているもの、髪型など、現代ではないが、自分の寝室のようだ。腕の中には、賢太郎にそっくりな男がいる。 「輝宗(てるむね)さま。あなたが明日、ご正室を(めと)られたら、もう、(ねや)ではご一緒致しません。でも、私は生涯、あなただけを愛し続けます。残りの人生、この思い出を抱いて生きていけるように、今夜は私をたくさん愛してください」  賢太郎そっくりな男は、切なげに、睫毛(まつげ)にびっしりと纏わりつくほど大粒の涙を浮かべ、自分に(すが)りついていた。 「賢佑(けんすけ)……。不甲斐ない俺を許せ……」  輝宗は、賢太郎―前世では賢佑という名だったらしい―を、床に横たえ、愛おしげに何度も口付けた。 「……もう、何も仰らないで……」  賢佑は涙を零し、唇を震わせ、両腕を広げた。輝宗は、眉を(しか)め、涙を堪えながら、賢佑の胸に顔を摺り寄せた。そのまま鼻先で寝間着の胸元をはだけさせ、素肌に唇を落とした。 「(すべ)らかで、綺麗な肌だ……。俺も、一生忘れまい……」  小さな突起を探し、尖らせた舌で突き、強く吸い上げる。賢佑は、甘く切ない溜息を洩らし、その引き締まった細身の身体を捩って、快感を訴える。脚をもじもじと動かすと、その主張した部分が、輝宗の猛る中心と触れ合う。 「慌てなくてよい、賢佑。朝まで、時間はたっぷりある」  輝宗は、無理やり笑顔を作って微笑み、賢佑の寝間着を剥いで行く。 「お前の全てが愛おしい」  輝宗は、親猫が仔猫を愛情込めて舐めてやるように、賢佑の全身に唇と舌を這わせた。  賢佑の肌は上気して紅く染まり、艶めかしかった。必死で声を抑えようとしているのが、いじらしくて、輝宗は泣きたくなる。先ほどから主張している賢佑の中心にも、輝宗は口を付けた。根元から扱き上げながら、敏感な先端に舌を這わせれば、若い賢佑は、あっという間にその熱情を迸らせる。 「んんっ……。輝宗さまっ……、恥ずかしい……。こんなにすぐ気をやってしまうなんて……」  武士としては細い背中を仰け反らせ、堪え切れずに零れた喘ぎ声は、少し掠れていて色っぽい。  輝宗は賢佑の後孔へと手を伸ばした。双丘を押し広げると、事前に彼は準備して来たのか、可愛らしい蕾はひくひくと蠢き、艶めかしく輝宗を誘った。 「絶景だ……。賢佑、準備して来たのか。最後くらい、俺にさせてくれれば良かったのに。いじらしい……」  輝宗は、再び涙ぐみながら、その蕾の内側へと、膏薬のような滑りのあるものを塗り込め、押し広げながら、良いところへと指を進めた。 「はあぁっ……、あぁ……」  じわじわと揉むように肉壁をあやし、賢佑の良いところを次第に強く押してやると、呼吸はひゅうひゅうと荒くなり、切ない喘ぎ声が時折混ざる。身体中がしっとりと汗ばみ、その表情は、快楽に蕩けるようだった。  輝宗が自分の着ているものを脱ごうとすると、賢佑は震えながらその身を起こし、輝宗の手を押し留めた。 「輝宗さま。最後の夜です。どうか、私にやらせてください」  賢佑は、輝宗の身体を覆う布を、噛み締めるように一枚ずつ丁寧に脱がせていく。互いに一糸纏わぬ姿になると、互いに目を潤ませて見つめ合い、ひしと二人は抱き合った。 「愛している……! 俺は、この国を守る責任と義務がある。それを投げうつ訳にはゆかぬ。賢佑、許せ……。でも、俺が心から愛し求めるのは、生涯お前ただ一人だ。……来世では、お前と一緒に生きたい……!」 「そのお言葉だけで十分です……。賢佑は幸せ者でございます。もう何も仰らずに、抱いてください……」  潤んだ瞳で、輝宗と軽く唇を重ねた後、賢佑は、輝宗の下腹部に顔を埋め、口で愛撫し始めた。ねっとりと幹の部分に舌を這わせてから、少し尖らせた舌で、先端の溝に沿ってゆっくりと舐め続ける。 「う……っ、あぁぁっ……! 賢佑……、今夜はたっぷり時間はあると言っただろう……」  輝宗は、賢佑の口淫を押し止め、猛る自身に滑るものを塗り付け、背後から賢佑を抱き締め、その双丘の内側へと彼自身を埋めて行った。賢佑の肉壁は、涙を堪える彼の唇のようにわななき、輝宗を喜んで迎えているようだった。二人は、甘ったるい溜息を零した。 「……ふっ、はぁっ……」  すぐに気をやってしまわないよう、賢佑は、必死に荒い呼吸で、高まり過ぎないよう、快感を逃がしているようだった。  輝宗は、賢佑の良いところを強く何度か突いた。賢佑は切なげな声をあげ、前からもしとどに雫を滴らせながら達した。賢佑の内部が激しく収縮し、締め付けられた輝宗も、呻き声をあげて精を放った。 「…………!!!!」  エロティックな夢を見た輝は、久し振りに、生理現象以外で滾る自分自身を感じながら目覚めた。 (……まさか、これが前世の夢か……? やたらリアルだったぞ?)  それでもまだ、輝は前世を信じていなかった。賢太郎に惹かれている自分にとって、彼と前世で恋人だったという美味しい話に感化され、自分に都合の良い夢を見たのだろう、と理性的に考えていた。  しかし、その夢が前世なのか、自分の欲望が見させたものかは兎も角、夢に出てきた男の切なく悲し気な表情は、自分が強引に迫った時の賢太郎の泣き顔と重なり、居たたまれない気持ちになった。  輝は、賢太郎に連絡した。 「この間のことを謝りたい。それと、実は自分も、先日聞いた前世の話と似たような夢を見た。もう少し、その話をちゃんとしたい」

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