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デート_2
車が動き始めて、後ろの席では藍澤さんと陽翔が楽しそうにガイドブックと睨めっこをしていた。
「なあなあ司、このホットドッグめちゃくちゃ美味そうじゃん?」
「お前、どこまで行っても食い意地張ってるんだな…」
恋人同士になった二人はいつの間にか名前で呼び合う間柄になったようで、見ている僕は少し擽ったい。
でも幸せそうで良かった。
邪魔はしないでおこうと後部座席から目を離して、運転席の長谷さんを盗み見る。
普段は掛けない眼鏡をして、あまり見ることの出来ない真剣な顔つきをしてる。
運転する男の人が格好良いって言う女の人の気持ち、ちょっと分かるかも……。
「………そんなに見られると照れちゃうな」
目と目が合って長谷さんは笑う。
ちょうど赤信号で車は止まっていた。
「ご、ごめんなさい……」
「はは、怒ってない怒ってない。恥ずかしいなってだけ。あんまり人乗せたことないんだ」
「そうなんですか?運転お上手ですよ。眼鏡も似合ってますし、その…格好良いと思います」
「照れるなぁ」なんて言いながら車は再び動き始める。
「今日の服、似合ってるね。オーバーコートの色使いも良い感じだよ」
「ほ、本当ですか?良かった…実は買ったばかりで……」
「そうなの?」
「お出掛けするって言われて慌てて買ったんです」
「わざわざ?いつもの格好で良かったのに」
「でも、長谷さんいつもオシャレだから……少しぐらい頑張らなきゃなって思って」
僕は長谷さんみたく身長があるわけでもない。
どちらかと言えば男の割りに華奢だと言われてしまうから、幼く見られることが多い。
少しでも長谷さんのような大人の男に近付きたくて、それっぽい服装にしてみたけれど、自分では違和感しかなかった。
「そんな風に思われてたんだ。嬉しいよ」
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