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デート_3
長谷さんはいつもこうして笑って受け流す。
多分沢山の人達に言われてきて、慣れた言葉だからだ。
「郁弥くんは何が楽しみ?」
「…………」
「……郁弥くん?」
「あ、すみません……ええっと、やっぱり迷路ですかね。難攻不落とまで言われたら気になりますし……CMもよく見てたので」
「………知ってる」
「え…?」
「ううん、何でもないよ。せっかくならクリアしたいね」
僕は大きく頷いたけれど、実は迷路が苦手なんだと長谷さんは肩を竦めた。
「子供の頃、姉さんと二人で巨大迷路に入った事があってね。その時足の速かった姉さんに僕は置いてけぼりを喰らって、取り残された独りぼっちの空間が怖くて、動けずにずっと泣いてた記憶があって……ちょっと思い出としては良くないんだよね」
確かに子供にとってあの巨大迷路の壁はとてつもなく思えて、怖い印象を持っていた気がする………。
「今日は置いて行かないでね?」
「はい、一緒にゴールしましょう!」
戯ける長谷さんはちょっと可愛いと思う。言えないけど。
車が目的地に着いたのは、それから一時間ほど経ってから。
「おお!思ったよりデカい!」
テーマパークの入口を見上げて陽翔は既に楽しそう。
「じゃあ僕と藍澤くんでチケット買ってくるから、ちょっと待っててね」
「え!?それなら僕達も…」
「いいよいいよ。ほら凄い人並んでるし、皆で行っても混雑するだけでしょ?だから待ってて」
陽翔もそうしようと言うので、僕は後ろ髪を引かれながらも頷いた。
「じゃあお願いします」
全然仲が良さそうに見えない背中を見送って、気付いたことがある。
「――目立つよなー、ああやって二人が並ぶとさ」
心を見透かされた言葉にドキッとして、隣の陽翔へと視線を移す。
「ビンゴ?」
「……ビンゴ」
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