8 / 79

デート_8

繋がれた手は優しいのに力強い。 僕よりも大きくて、少し体温の低い手。 ずっと繋いでたい。けど、それでなくても長谷さん目立つし、こんな男と手なんて繋いでたらいい的だよね…。 「あの、手……」 「ああ、ごめんね。嫌だった?」 「嫌とかじゃないんですけど…やっぱ変かなって」 「郁弥くんはそう言う周りの目が気になる?」 「僕は全然…でも長谷さんが好奇の目で見られるのは嫌です」 そっか、と笑った長谷さんは手を離してくれるどころか、更に指を絡めて絶対に離さないと言わんばかりに握り返してくる。 「それなら、このままね」 「え、でも…」 「大事なのは周りじゃない。君がどう思うかだけだよ」 僕がどう思うか、だけ……。 「ところで、本当は何が飲みたかったの?」 僕らの足取りはさっきと同じ売店の前で止まる。 「本当は………」 「うん」 「本当は……………ロイヤルミルクティーが飲みたかったです」 「はは、じゃあ僕も当たりだったね」 「………どうして、分かったんですか?」 僕の問いに長谷さんは悪戯っ子のような顔を見せる。 あ、僕この顔好きなんだよなぁ……。 「あの二人も言ってたでしょ。一緒に居れば分かるってさ」 「…そう言うものですか?」 「そう言うものらしいよ」 それなら僕にも分かるのかな……。 「長谷さんは、和食が好きです」 「……うん。」 「珈琲よりも紅茶派で、それよりも緑茶が好きです」 「正解」 「甘いものは好きだって言ってましたが、チョコレートだけは苦手ですよね?」 「はは、バレてたか。恥ずかしいな」 ああ、本当だ。 「……そう言うものなんですね」 「みたいだね」 僕らも少しは、歩み寄れてるのかな………。

ともだちにシェアしよう!