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デート_9
結局ミルクティーは長谷さんが買ってくれた。
緑茶は飲んでしまったからお詫びにと言われたけど、チケット代を払わせてもらえてないし、僕としてはちょっと不満だったりする。
「ねえ郁弥くん、今度からは君が食べたい物や飲みたい物をちゃんと買って」
「………はい」
「そうしたら僕も二倍楽しめるから」
陽翔が言ってた事と同じ……。
「てことで、僕もミルクティー飲みたいなぁ」
「あ、どうぞ」
差し出した紙コップは僕の手から離れることはなく、少し屈んだ長谷さんがストローに口付ける。
目線の高さで伏せられた睫毛があまりにも綺麗で見惚れてしまった。
「ん、ごちそうさま」
「………はい」
「戻ろっか。二人とも待ちくたびれてるかも」
長谷さんはまた僕の手を引いて歩く。
――ドキドキと心臓が鳴る。
「……やっぱり羨ましい」
「ん?」
「いいえ、何でもありません。陽翔、怒ってないと良いんですけど」
僕も誰かの………長谷さんの特別になってみたい。
もし長谷さんの特別になれたら、きっと大切にしてもらえるんだろうな……。
「………おこがましいな、僕は」
長谷さんには聞こえない。いいんだ、それで。
これは僕への戒めなんだから。
だけど………。
「長谷さん、」
「んー?」
今この瞬間だけ、
「僕、今すごく楽しいです…」
「………そっか、良かった。僕も楽しいよ」
長谷さんを独り占めしてもいいかな…。
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