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デート_12
「それじゃあ二手に分かれようか。どっちが先にゴール出来るか競争しよう」
長谷さんの提案に陽翔は一番に乗り気になって、藍澤さんを引っ張りながら右の道へと進んで行く。
「負けたらソフトクリーム奢り!絶対負けねー」
慌ただしく言葉を置き去りにして、二人の姿は見えなくなる。
「大丈夫かな………」
「大丈夫だよ。二人の事ばかり気に掛けないで、今は僕との時間楽しんでほしいな」
「は、はい………」
手を引かれて、僕らも左の道を歩き始めた。
「ソフトクリームかぁ……僕らは何奢ってもらおうか?」
「そうですね……お腹が空いたので焼きそばとか?」
「いいね。フランクフルトも付けてもらう?」
「ふふ、いいですね」
「じゃあ勝たないとね」と長谷さんが片目を瞑ったので、僕も真似て「はい」と返したら、吹き出すような笑いが返ってくる。
「ふっ、はは、郁弥くん、ウインク下手だね」
「出来てませんでしたか?自分ではちゃんと出来てるつもりだったんですけど……」
「もう一回やって」
リクエストに応えてもう一度片目を瞑ってみる。
「ふふ、それほぼ両目閉じちゃってるよ。」
「でも視界は消えてないから薄く開いてるはず…」
「薄くって、はは。郁弥くん可愛い」
馬鹿にしてますよね?と文句を言おうと顔を上げた瞬間、視界を遮って唇に当たる柔らかな感触。
え…………。
「――可愛いよ」
今、唇当たっ……た……?
「わぁっ、郁弥く――……大丈夫?」
四肢のどこにも力が入らなくて地面に崩れ落ちそうになった身体を、長谷さんが支えてくれる。
「今……キス……な、んで?」
「……したくなるぐらい、可愛かったから」
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