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デート_14

「大丈夫?立てる?」 「ズルい……俺も篠原に優しくされたい」 「だからうるさいって」 何だかんだと仲が良さげな二人だなぁ。 「えっと、大丈夫です。すみません、ちょっと人とはぐれてしまって…」 「やっぱり迷子?俺らと一緒に出口探す?」 その提案に彼の隣からは盛大なブーイングが起こる。 「今日デートなのに!」 「浅井マジでうるさいし、別にデートじゃねーだろ」 「二人で出掛ける、それ即ちデート!」 「はいはい、一人で言ってろ。てか……」 何かに気付いた長身の青年は僕の方へと手を伸ばしてくる。 「血、出てるけど……」 指先が触れたのはさっき噛み締めた唇で、流れ出ていた血を拭ってくれたようだった。 「あ…すみません、ありがとうございま――う、ぇっ!?」 「あ………?」 僕と青年は視線を合わせたまま瞠目する。 僕の身体が急に後方へと引っ張られたから。 バランスを崩して地面に倒れると覚悟したけれど、襲ってきた衝撃は柔らかく温かいもの。 それから耳に届くのは駆け足の鼓動と荒い息遣い。 恐る恐る上げた視線の先には、やっぱり長谷さんが居て、分かってはいても心臓が鳴る。 「は、長谷さ――わっ、え、なに…!?」 「えぇー………怖っ………」 長谷さんは無言のまま、僕の手を引いて早足で歩き始める。 申し訳ないと、振り返りその場に佇んだままの二人にかろうじて頭を下げた。 いつもは冷たい長谷さんの手が、汗ばむほど熱くなっていて、僕はその熱にただ一人胸を焦がれた。

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