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デート_15

どのぐらいそうして走っただろう。 「は、長谷さ……っ…待っ、待って……息っ、苦し、です……」 息が上がって根を上げれば、長谷さんは漸くその足を止めてくれた。 ピタリと足を止めた長谷さんは全く後ろを振り返ってくれない。 やっぱり突き飛ばしたり、勝手に走っていなくなったり、怒ってるよね……。 「は、長谷さん…あの、ごめんなさ――」 「――さっきの誰?」 怒気が感じられる声音に、身体が自然と強ばる。 「さっき…あ、えっと……」 「もしかして前に付き合ってた人?」 「え……?ち、違いますよ!あの人は…」 「だったら――!」 痛いぐらい握り締められた手を引かれて、僕の身体は長谷さんの懐に抱え込まれる。 至近距離では普段見られない表情(かお)をした長谷さんが、その目に僕を映していた。 「………どうして怪我なんてしてるの?」 痛ましそうに見つめられるのは唇。 多分さっきのじゃ血が拭い切れてなかったのかもしれない。 「これは違うんです。その僕が自ぶ――っん…!?」 否定の言葉は二回目のキスに飲み込まれていく。 また……何で………っ。 「ん…んー……っ、ぁ、や…」 「……僕との約束、もう忘れちゃった?」 唇の噛み締めた部分に血を舐め取るよう舌が這う。 「怪我させる男の所になんて行っちゃダメだって言わなかった?」 腰に回った腕が逃さないとでも言うように、僕の身体を力強く引き寄せて………熱る長谷さんの体温が、伝わってくる。 「あ………」 「………もう忘れちゃったの?」 怒っていると思っていたのに……。 長谷さんの目は、とても、とても悲しい色をしていた。

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