15 / 79
デート_15
どのぐらいそうして走っただろう。
「は、長谷さ……っ…待っ、待って……息っ、苦し、です……」
息が上がって根を上げれば、長谷さんは漸くその足を止めてくれた。
ピタリと足を止めた長谷さんは全く後ろを振り返ってくれない。
やっぱり突き飛ばしたり、勝手に走っていなくなったり、怒ってるよね……。
「は、長谷さん…あの、ごめんなさ――」
「――さっきの誰?」
怒気が感じられる声音に、身体が自然と強ばる。
「さっき…あ、えっと……」
「もしかして前に付き合ってた人?」
「え……?ち、違いますよ!あの人は…」
「だったら――!」
痛いぐらい握り締められた手を引かれて、僕の身体は長谷さんの懐に抱え込まれる。
至近距離では普段見られない表情 をした長谷さんが、その目に僕を映していた。
「………どうして怪我なんてしてるの?」
痛ましそうに見つめられるのは唇。
多分さっきのじゃ血が拭い切れてなかったのかもしれない。
「これは違うんです。その僕が自ぶ――っん…!?」
否定の言葉は二回目のキスに飲み込まれていく。
また……何で………っ。
「ん…んー……っ、ぁ、や…」
「……僕との約束、もう忘れちゃった?」
唇の噛み締めた部分に血を舐め取るよう舌が這う。
「怪我させる男の所になんて行っちゃダメだって言わなかった?」
腰に回った腕が逃さないとでも言うように、僕の身体を力強く引き寄せて………熱る長谷さんの体温が、伝わってくる。
「あ………」
「………もう忘れちゃったの?」
怒っていると思っていたのに……。
長谷さんの目は、とても、とても悲しい色をしていた。
ともだちにシェアしよう!