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デート_16
もう一度唇が重なりそうになって、全力で顔を背ける。
「や、待って…!」
「さっきの男は良くて、僕はダメ?」
「違っ…長谷さんはダメじゃないです…けど、僕がダメなんです……」
「?」
「だって、僕は………こんな、ダメなのに。ダメだって分かってるのに……キスなんてされたら、ドキドキして……」
この目に捕らわれたら、僕は………。
「もっと貴方を、好きになってしまう……」
いつも求められるがままだった。
自分から誰かを求めたことなんてなかった。
こんなにも、誰かを求める気持ちを初めて知った。
知りたくなかったな……。
どうせ手に出来ないのなら、苦しいだけだから。
「……ダメなの?」
「え…………」
「それはダメなことなの?」
「ダ、メ……ですよ……だって…」
「僕が嬉しいと思ってもダメ?」
「ダ、メ……っ……」
「――ダメじゃないよ。ダメじゃないんだ」
顎に添えられた手が背けた顔を引き寄せて、有無を言わさず唇を奪われた。
重なるだけじゃない。
貪るように深く、舌が口腔に入ろうとねじ込まれて……受け入れることしか教えて込まれていない僕は拒み方が分からない。
「ぅ…っん……んぅ……ふぁ……あっ…」
「………僕は結構引き返せないぐらいに君が好きなんだけど、気付いてなかった?」
「………………」
「ダメなんて言わないで。もっと僕の事好きになって。他のどこにも行かないでって、言わせて欲しい」
「…………っ………」
「僕は、――君の恋人になりたい」
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