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デート_19
誤解されたくないのに、これ以上どう伝えたらいいのか分からない。
もどかしさに長谷さんの服の裾を掴んだ。
「約束、破ったりしてないです……。戻ったりなんかしません……長谷さんだけが好きなんです……」
「………それは、ちょっとズルいなぁ」
「信じて、ほしいです…っ……」
「うん、分かった。信じるよ。でも例え郁弥くん自身が付けた傷だとしても、あまり怪我してほしくないな。ね?」
「はい………」
「ん、良い子」
大きな手が髪をぐしゃぐしゃにしながら頭を撫でてくれて、次にその手は目の前に差し出される。
「行こうか。出口で二人が待ってるかもしれない」
「……はい」
手を握ったら、「うーん、ちょっと違うかな」と指を絡めて握り返された。
これ、好きなやつだ……。
「恋人同士なんだし、手を繋ぐ時はこれがいいな。恋人繋ぎってやつ」
「僕もこれ、好きです」
「良かった」
「勝負負けちゃいましたかね……」
「はは、多分ね。ソフトクリームを捧げないと」
「すみません、僕のせいで……」
「そんなこと無いよ。それに、郁弥くんを手に入れられたからね。ソフトクリームなんて安すぎる対価だよ」
それを言うなら僕だって…。
「ソフトクリームは僕が奢ります」
「えー?いいよ、僕が言い出したことだし」
「絶対!僕が奢ります!長谷さんでも譲りません!」
「………ふ、ははっ、うんうん。分かった、じゃあお願いしようかな」
「はい!」
外に出られたのはそれから三十分近く経ってから。
出口では案の定ふんぞり返った陽翔が待っていて、ピースサインを掲げながら「ソフトクリームよろしく」と僕らを迎えた。
「にしても遅かったじゃん。そんなに迷ってたのか?」
「う、うん……まあね。僕が長谷さんの足引っ張っちゃって」
「ふーん………て言うか、二人なんか距離近くね?」
「え………?」
言われて手を繋いだ右側が体温と密着している事に気付く。
あ……もしかして僕、無意識にくっついちゃったのかな…。
申し訳ないことしちゃった…。
一歩左へ身体をズラして、距離を取る。
そうしたら今度は長谷さんが左にズレてきて、開けたはずの距離が詰められる……。
「………何イチャついてんの?」
「え、いや、そんなつもりは……あの、長谷さん?」
陽翔の冷たい目に耐えられず、ニコニコ笑ったままの長谷さんに助けを求めて視線を合わせた。
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