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欲_3

その夜はやっぱり眠れなくて、テーブルヤシの傍で一夜を明かした。 何となく葉が寂しそうに見えたのは自分の心境を映してしまったからなのかもしれない。 「……寂しいね、僕も君も」 水をあげても、ちっとも嬉しそうにしてくれない。 郁弥くんがあげてる時は水が乱反射してキラキラ嬉しそうに見えるのに。 「やっぱり僕らは似たもの同士だね」 今日は来てくれるかな?来てほしいな。 夜が、待ち遠しい。 そんな僕の期待を裏切ってその夜も、また次の夜も彼は姿を見せてくれなかった。 連絡をしても用事が出来た、寝てしまっていたなんて彼らしくない理由もあった。 何かあったか、あるいは……避けられていると考えた方が妥当か。 「………珍しいな、そんなに態度に出すなんて」 「…………え?」 「カクテルを作る手付きが雑だ。それに客への愛想笑いもぎこちない。あと隈が酷い」 まさか藍澤くんからそんな事を言われるなんて思ってもいなくて、言葉に詰まってしまった。 「あー……ごめんね」 「………永岡、暫く店に来てないな」 「……………」 「連絡は?」 「取ってるよ、一応ね」 「……………」 文面だけじゃ何も分からない。 顔を見て、声を聞いて、温もりに触れてみないと何も分からない。 会いたい……。 でも同じぐらい怖い。 郁弥くんが僕に飽きたのだとしたら? 郁弥くんの運命の番が現れたのだとしたら? もし……… もし拒絶されてしまったら………。 僕はまたそこに一人置いていかれてしまうんだろう。 そう思ったら僕は、堪らなく怖くなってしまうんだ。

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