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欲_5

以前教えてもらった職場の店名を頼りに、スマホの地図が示す場所へと僕は足早に向かう。 いつもは彼が来てくれるばかりだったから、職場に赴くのはこれが初めて。 「ファミレス…ファミレス………ここか」 地図の示した場所には僕が探し求めていた店の看板。ここで間違いなさそうだ。 客として来るのはまた今度かな。今は……。 店舗横の細い路地から裏手に回り込むと、従業員が出入りしているであろう裏口の扉があった。 そろそろ出てきても良い時間かな…。 扉を開けて最初に出てきたのは、若い女性の二人組。 多分学生らしき彼女らは僕の姿を見て、驚いていたけれど曖昧に笑って返せば、特段騒ぎ立てることもなく立ち去ってくれる。 こんな裏口で大の男が立っていれば驚きもするよね。 次に扉が開いた時、中から人の姿はすぐには現れず、まるで周囲を警戒するように少しずつ開かれていく。 半分まで扉が開いたところで堪らず僕は声を掛けた。 「……郁弥、くん?」 「――!?ぇ………?」 その声音に反応して、ようやく扉の隙間から顔を見せてくれたのは驚いた表情をした郁弥くん。 「は、長谷さん…!?何で……僕今日会えないって……」 「うん。ごめんね、僕がどうしても君に会いたくて。………やっぱり迷惑、だったかな?」 「あ、いや……そんなことは……」 「それなら、もっとちゃんと顔が見たいんだけど」 扉の隙間から顔を覗かせるだけで、郁弥くんが外に出てきてくれる気配はない。 「それは……その……」 「郁弥くんは僕に会いたくなかった?僕に飽きちゃったかな……?」 「ち、違います!飽きるなんて、そんな……そんな事ないです!」 「だったらお願い。こっちに来て。………ダメ?」 郁弥くんの視線の高さに腰を下げて、怖がらせないようにゆっくりとした動作で右手を差し出す。 「……それ、ズルいです…………」 「うん、知ってる。でも好きな子を目の前にして形振(なりふ)りなんて構ってられないから」

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