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欲_6

お願い、ともう一押しに郁弥くんは躊躇うようにゆっくりと扉を開いてくれる。 それから視線を地面に落としたまま外へと身を出すと、僕の手を取ってくれた。 その手をぎゅっと握る。僕より小さくて少し荒れた手。仕事を頑張ってる証拠。 「ありがとう。会いたかった」 「――〜〜…っ、長谷さん………ごめんなさい、僕……」 何かを言い淀む郁弥くんの言葉を僕はジッと待つ。 「僕も、ずっと会いたかったです…っ…」 溢れそうな涙を堪えながら、僕が欲しかった言葉をくれた彼をそっと抱き締めた。 「良かった。もうこうして抱き締められないかと思った」 おずおずと背中に回ってきた手がぎゅっと服を掴む感覚がする。 「飽きるとか絶対ないです。絶対、絶対、ないですから」 「本当?」 「本当です。僕だって……早く会いたかった…っ…」 「………会えなかった理由があるんだよね?」 少し身体を離して懐の郁弥くんを見下げた。 「教えて、くれるよね?」 「それは…………」 「…………どうしても言いたくないなら強制はしないよ。けど――」 好きな子の変化を見逃すほど僕は鈍感じゃない。 懐にいる郁弥くんは無防備で、僕が腕を掴み、袖から手首を晒すのなんて簡単だ。 「――あ……っ…」 「もしこの手首の掴まれた痕が関係してるなら、見逃してあげることは出来ないな」 白い肌に浮かぶ手首の痣は、はっきりと手型に色が変化している。 最後に僕と会った時、こんな痣はなかった。 「郁弥くん、目逸らさないで。僕を見て。…教えて、くれるね?」

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