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欲_10

困ったな、どうしよう。 ――すごく嬉しい。 抵抗を知らない彼が初めてαに抵抗した。 慣れてしまった恐怖心を取り戻してくれた。 僕じゃないと嫌なのだと、そう言ってくれた。 こんなにも嬉しい……。 (あふ)れて、(こぼ)れる、止めどない愛しさ。 僕は確かに姉さんが好きだった。だけどこんな気持ちにはならなかった。 そうか、これが………気持ちが通じ合うって事なんだ。 運命の番と結ばれた時、姉さんがあんなにも幸せそうな顔をしていた気持ちが今ならよく分かる。 「……郁弥くん、ごめんね。抱き締めさせて」 彼の返事を聞く前に、僕は腕の中にその身体を抱いた。 「よく頑張ったね。君は強い。…ここに帰って来てくれてありがとう」 「……っ………ただいま…です…?」 「…ふふ、おかえり」 腕の中の瞳と目が合う。 それから自然と唇が重なった。 触れるだけの、まるで子供騙しみたいなキスなのに身体は熱りを覚える。 ああ、僕も男だな。この子の全てが欲しくなってしまう。 その証拠に下肢では熱量が欲を主張してる。 でも怖がらせたくはない。 「郁弥くん、今日はもう遅いし泊まっていくよね?」 「あ、はい。ご迷惑じゃなければ…」 「うん、いいよ。疲れただろう?一緒に寝よう。先に寝室に行ってて。僕もトイレに行ってから追い掛けるよ」 トイレでさっさと抜いてしまおう。 「あ……ま、待って………!」 立ち上がった僕の手を取って、食い気味に郁弥くんが制する声を上げた。 「ん?どうしたの?」 慌てなくていいと落ち着かせるように目線の高さを合わせて郁弥くんに笑い掛けると、彼は言いにくそうに口籠る。 「怒らないから言ってみて?」

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