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二人_1
side Ω
「はぁ……結婚式って良いもんなんだなぁ」
「お前、その台詞何回目だ?」
呆れた物言いの司は隣を歩きながらネクタイを緩めた。
今日はめでたい日。
何を隠そう末松さんの結婚式が執り行われ、揃って出席してきた帰り道。
「だってさぁ……」
「毒されすぎだ」
「アンタだって散々呼ぶなって言っておきながら、しっかり友人代表のスピーチしてたじゃん。めちゃくちゃ胡散臭い笑顔で」
当たり障りないスピーチをする司を思い出しながら、その時の顔を真似てあからさまな作り笑いを浮かべた。
「ほら、こんな感じ」
「何だその顔」
「司のモノマネ」
「やめろ」
鋭いデコピンが額にヒットして、地味に痛い。
「痛い!アンタのデコピン痛いんだから加減しろよな」
「されるような事しなけりゃいいだろ」
「やだ」
「じゃあ威力上げといてやる」
酷いと声を上げた俺に司は一笑を溢した。
それから少しの間無言で歩いて、スーツを着た珍しい司を横目で眺めた。
「……良かったな、末松さん幸せそうでさ」
「……そうだな」
「司はさ…………やっぱいいや」
「何だよ。気持ち悪いから言え」
言い淀む俺に向けられる顔は有無を言わさない圧を感じる。
「……司は心から祝えたのかなって」
「………………」
「いや、ほら一応好きだったわけじゃん?その未練とか本当にないのかなって思ったり思わなかったり……的な……?」
「何で疑問系なんだよ」
そうして司はまた笑う。
よく笑ってくれるようになったよな……。
「そんな事考えてたのか」
「いや俺にとっては割と重要なんだけど……」
「ふっ、そうか。……そうだな」
司が徐に足を止めたので、俺も同じように歩みを止めた。
「つか……――わっ!?何、ちょっ、頭ぐしゃぐしゃにすんなって!」
突然伸びてきた手が折角セットした髪を無造作に崩していく。
「未練なんてあるわけないだろ。俺が好きなのはお前なんだって何回言えば覚えるんだ?」
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