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二人_2
分かってるよ、そんな事。
でもさ不安になる時もある。それが好きで好きで堪らない人なら尚更。
「番にまでなっておいて、まだ不安か?」
「だって仕方ないじゃん。それが恋ってもんだろ?それにさ、俺は司しか好きになったことないから、その……どうしたら気持ちに区切りがつくのか分かんないし。実際どうなのかなって」
思案した司は「それもそうか」と一人心地に呟いて、暗い道をまた歩き始める。
「ピュアボーイだもんな?」
「うっさい、馬鹿にすんな。誤魔化されないからな」
「…………アイツを好きだったのは紛れもない事実だ。けど今俺が一緒に居たいと、幸せにしたいと思うのはお前だ。もちろん奏輔にも幸せであってほしいとは思うがな」
そう言った司の横顔は穏やかで、俺は吸い込まれるように見惚れていた。
「どこかで幸せであってくれるなら、それでいい。俺が幸せにしてやりたいのはお前だけだ」
司にしては珍しく饒舌だ。
そう言えば折角の席だからと普段飲まないアルコールを口にしていた気がする。
バーテンダーやってるくせに俺の前じゃ全然飲まないんだよな、酒。
もしかして普段よりお喋りになるから避けてた、とか……?
「ふーん、俺だけか。そっか」
「だから今日の席は心から祝えた」
「そっか、そっか。それならいいや」
隣に並ぶ司と自分の腕を絡めて身を寄せてみる。
普段なら離れろと怒られるところだけど、司は特に何も言わない。
やっぱり少し酔ってるのかも。
「なあなあ、」
「……?」
「司はさ、末松さんのどういう所が好きだったんだ?」
「……何だよ、突然」
「いいじゃん、教えてよ」
「……………忘れた」
「嘘つき」
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