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二人_3
見上げた司は俺を一瞥して、それから口を開く。
「……お人好しな所、ちょっと馬鹿な所、よく笑う所」
「うんうん。初めて会った時から思ってたけど、怪しい壺とか買っちゃうタイプだよな、末松さんって」
「………人の為に泣ける所、甘い物が好きな所、料理はイマイチな所」
「……うん……?」
「ふっ……まだ分からないのか?」
「え………?」
「俺の為に一生懸命になる所、キスすると真っ赤な顔する所、抱き締めると煩いぐらい心臓が鳴る所」
………待って、これって………。
「それって……」
「――全部、お前の好きな所だ」
離しかけた手を司が引いて、声を上げる間もなく柔らかな唇が重なった。
すぐに離れたそれは弧を描いて、悪戯に笑う。
「なっ………ここ、公道なんですけど………」
「こんな夜更けに誰も居ない。周りは確認したしな」
「俺訊いたの末松さんの好きな所なんだけど?」
「だから忘れた」
すたこらと何事も無かったかのように歩いていく背中を慌てて追い掛けて、顔を覗く。
「らしくない。アンタ見た目より酔ってるだろ?」
「目出度い日だからな」
「そっか、そっか。悪くないな、そんなアンタも」
家まではあと数メートル。
俺達が喋らなくなると夜道は寂しいぐらい静まり返る。
「………あのさ、また一緒に紗奈さんに会いに行ってもいい?」
「…………」
「ほら前行った時はさ、事情とかと分かんなかったし、司とこんな風になるなんて思ってなかったし。めちゃくちゃ間抜けな自己紹介しか出来なかったから、ちゃんと挨拶したい」
そうだなと呟いた横顔はやっぱり穏やかで、何でか分からないけど鼻の奥がツンとした。
「俺も花の一輪ぐらい供えてやらないとな。アイツ怒ると怖いから」
何でだろ?
何で俺、こんなに泣きそうなんだろ……?
「…………陽翔?」
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