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クリスマス【長谷・郁弥】1
【Twitterアンケートで票を入れてもらえた不能アルファCPでクリスマスSS書かせていただきました。『長谷、郁弥編』と『藍澤、七瀬編』の二本立てになります】
『クリスマス〜長谷、郁弥編〜』
「え!?24も25も仕事!?クリスマスなのに!?俺って言う恋人までいるのに!?」
信じられないと声を上げるのは陽翔くん。
対して言葉を向けられた藍澤くんは深々と息を吐いた。
「仕事なんだから仕方ないだろ。クリスマスが一番書き入れ時なんだよ、この店は」
「そうかもしんないけどさぁ……」
と不貞腐れたように彼はカウンターへと突っ伏した。
その様子を横目に僕は目の前に座る郁弥くんへカクテルを提供する。
「ごめんね、実は僕もシフト入っちゃってるんだ」
そう侘びた僕に郁弥くんは微笑んで首を振った。
「気にしないで下さい」
陽翔くんのように拗ねたりはしないだろうと思っていたけど、残念そうに寂しがる様子さえ全くもって見えないのは物悲しさがある。
「そうだ。クリスマスはね、特別な制服なんだ。いつも通りお店には来てくれると嬉しいんだけど…」
「そうなんですね!でもごめんなさい……クリスマスはここに来れそうにないんです」
正直断られるだなんて思ってなかった僕は面食らってしまった。
「え、何か予定入ってた……?」
「入ってると言うか………」
郁弥くんは少し頬を赤らめると口の端に手を当てて、声を潜める。
「実はですね、クリスマスの日ちょうど発情期の周期なんです」
「え………」
「だからお店には来れないんですけど……その代わりその日は長谷さんの家で待っていてもいいでしょうか……?」
発情期………そう言えばまだ一度も郁弥くんの発情期を見たことがない……。
「だめ、ですか………?」
固まった僕に恐る恐る問い掛けた郁弥くんの瞳は不安に揺れる。
「だ、め……ではないけど、でも……大丈夫?」
発情期のΩがαを側に置くということは、つまり……。
「はい。長谷さんと過ごしたいんです………お願い、出来ますか……?」
「………郁弥くんがいいなら、喜んで」
頬を赤く染めながら破顔した彼を見て、心底仕事中で良かったと思う。危うくすぐにでも抱き潰してしまいそうだった。
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