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クリスマス【藍澤・七瀬】1

『クリスマス〜藍澤、七瀬編〜』 12月24日と25日は店の書き入れ時で毎年休めた試しがない。 それは今年も例外なくだ。 分かってはいたが案の定陽翔の機嫌を損ねた。 家を出てくる時もベッドの上で布団に包まっていたぐらいだから、帰りにはケーキの一つでも手土産にしてやるかと通勤途中でそれを買った。 店長に頼んで職場の冷蔵庫を借りれば、長谷がニヤニヤと俺に近付いて箱を吟味する。 「それこの前僕が教えてあげた美味しい洋菓子店の箱だね。陽翔くんに?」 「…………まあな」 「まだ機嫌を損ねたままなんだ?」 答えの分かりきった問いに言葉を返すほど時間の無駄な事はない。 「お前のとこは随分物分りがいいな」 「あー……まあそれは色々あってね……」 「?」 「ご心配なく、帰ってから熱い夜を過ごす予定だから。藍澤くんもそうだろう?」 「……だといいがな」 こんな無駄口を叩けたのも束の間、開店から程なくして店は目まぐるしい程忙しくなる。 昨日もなかなかだったが、25日である今日は更に客足が多い。 普段は飄々と仕事をこなす長谷も今日ばかりは慌ただしく動き回っていた。 閉店ギリギリまで混雑していた店内の後片付けを済ませ、俺も長谷も足早に店を出た。 お疲れ、と軽く声を掛け合って俺達はそれぞれ帰路につく。 自然と足取りは早くなり、家の前に着いた時には息もそこそこに上がっていた。 道中、どうやって機嫌を取ろうかと考えていたがこれと言って思いつかない。 ケーキは買ってみたものの、これで機嫌が直るかどうか……。 ドアノブに手を掛けて思わず出た溜息。 ……既に寝てる可能性もあるな。そうしたらケーキは冷蔵庫に入れて、せめて抱き締めて寝てやろう。 もう一度息を短く吐き出してドアを開く。 玄関に届くリビングからの光が見えて、どうやら起きて待っていたらしいと悟った。 後ろ手にドアを閉めると、リビングから陽翔が顔を覗かせ、とことこと駆け寄ってくる。 「おかえり!」 朝の不機嫌さは何処へやら、ニコニコと笑う陽翔に面食らって一瞬言葉に詰まる。 「た、だいま……」 「待ってた!ほら早く早く!」 まだ靴を履いたままの俺の手を取って陽翔は中に入れと促してくる。 「分かったから、ちょっと待て」 「もう十分待ったし!早く!」

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