59 / 79

長谷と七瀬SS

『Twitterアンケート1位長谷と2位七瀬でSS書かせていただきました。』 「長谷さんはさーぁ、ほんっっっとーに郁弥のこと好きなの?」 「…………もちろん。愛してるよ」 「うっわ……そんな真顔で愛してるとか急に言うなよ。鳥肌立ったじゃん」 自分で訊いてきたくせに随分な物言いだなぁ。 まあ原因は恐らく………。 と横に目を向ける。 カウンターの端で荒々しくシェイカーを振る藍澤くんは、その視線に気付いていながら知らない振りをするつもりらしい。 さてさて今回はどんな喧嘩をしたのやら…。 「だって本当に愛してるから」 「ふーん………喧嘩とかしないの?」 「しないかな。彼、全然怒らないしね」 「まあ郁弥はなー、そうだよなー……」 と陽翔くんはカウンターに突っ伏した。 「じゃあ長谷さんは……?」 そのままの姿勢で恨めしげに見上げてくる目に、僕はグラスを拭いていた手を止めた。 「僕?」 「そ、長谷さんは怒ったりしないわけ?」 「僕は…………そうだね、怒るよ」 「え!?怒るの!?」 意外な返答だったのか勢いよく上がった顔は瞠目している。 「ふふ、怒るよ」 「た、例えば?」 「彼が自分を蔑ろにした時。寂しい事や辛い事を僕に何も言わず隠した時。僕は怒るかな」 「何かそれ………惚気けじゃん」 「ふふ、バレちゃった?でも陽翔くんだって、そう言われたら心当たりあるんじゃない?藍澤くんが意味もなく君に怒るとは思わないけどな」 言葉に詰まった陽翔くんはチラリと藍澤くんを見て、短くため息を溢した。 「…………分かってるよ、そのぐらい」 小さく呟いた彼は肩を落として席を立つ。 「あれ、帰っちゃうの?」 「………飯作って帰り待つ」 「そっか、そっか。いつでも惚気聞きに来てね」 「………俺、やっぱ長谷さん苦手」 「それは残念。ありがとうございましたー」 背中を見送った後はカウンター端の仏頂面バーテンダーに声を掛ける。 「君も相変わらず不器用だね。喧嘩の原因は何なんだい?」 「…………別に」 「まあ言いたくないならいいけどね。彼みたいなタイプは遠回しよりもストレートに伝えた方がいいと思うよ」 どうやら図星らしく藍澤くんも言葉に詰まった様子。 全く……似たもの同士だなぁ。 「仲直り、出来るといいね」 「……………」 【END】 →next 長谷・郁弥【(つがい)SS】

ともだちにシェアしよう!