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「俺を舐めないで欲しいな。若い頃から職質は得意なんだ。わかるんだよ、君が隠し事をしてることはね」 「……」  シラを切らなければと思ったが、言葉が浮かばない。 「まあ、仕方がないかな。昔の愛人に頼まれちゃ断りきれないよね。三年振りの再会か。さぞかし燃えるだろうね」  頭の中が真っ白になり白根は大木戸に掴みかかったが、力の差は歴然としていて、逆に壁に躰を押し付けられてしまった。 「ちょっと……なんのつもりだよっ」  視線に射すくめられ、白根は顔をそむけることができなかった。 「……ずっと否定し続けてたんだけど、君のそんな顔を見ちゃうとやっぱり自分に嘘はつけないな」  大木戸は言葉が終わらぬうちに白根の脣を奪った。  白根は必死で抵抗したが、貪るように舌を吸われると、この数日だいぶ搾り取られたはずの躰にはむしろ火がつき始めている。 「あんた仕事中だろ。こんなことして、許されると思ってるのか……っ」  大木戸は頸筋に舌を這わせた。 「残念ながら今日は非番でね……いや、そもそも人間として駄目か。それは俺もわかってるんだけど、君が男に抱かれた感じをぷんぷんさせてると、どうにも我慢ができなくてね……全然隠しきれてないんだよ、あいつの匂い……」  結局、大木戸は白根の作り話などまったく信じておらず、はじめから松岡を匿っていると看破していたのだろう。 「悪いけど、君を俺のものにしたい。せめて、良くしてあげるから許してくれよ」  畳の上に転がされて白根は羽をもがれた鳥のような気分になった。離れには客はおろか従業員も近づかない。声をあげても奇跡でも起きない限り聞きつけてもらえないだろう。幸いに誰かが来てくれたとして……こんな姿を見られるわけにはいかない。 「もうこんなになってるのか、若い子はいいね」  服を脱がせて白根の硬くなりかけた陽物を露わにすると、大木戸は脣を舐め、片手で器用にジャケットを脱ぎ捨てた。 「歳をとると気持ちばかりが急いてなかなか……ああ、でも君のせいで俺のもこんなになってしまってる」  怒張したものを見せられて、白根は思わず唾を飲み込んだ。  大木戸は白根に覆いかぶさると、お互いの陽物を擦り合わせた。男の搏動が脚の付け根にまで響いて快楽に引きずられそうになる。感じるまいと耐えているのがむしろ男の劣情をそそるようで、大木戸の愛撫はむしろ熱を帯びていった。 「やっぱりこれくらいじゃ足りないのかな」  大木戸は躰を起こし、白根の脚の間に指を這わせた。 「やっ……嫌だ……あ」 「そうなの?慾しそうにしてるよ」  拒絶している白根の表情に隠しきれない慾情が滲み出ているのを、大木戸の眼は捕らえているのだろうか。 「もう我慢できないな。白根くん……ごめんね」  大木戸の声は掠れていた。すでに慣らされている躰は白根の意志とは関係なく男のものを受け入れてしまった。息が詰まりそうな感覚に、白根は思わず男の腕に縋りついていた。 「ああ、そんな風にしてくれるんだ。嬉しいよ」  熱い楔が躰の奥に何度も打ち込まれる。一方的に快感を与えられるのは初めてだった。抵抗どころか愛撫に応えることすらできず、なにもかもが奪われていくような感覚だった。 「白根くん、とても感じているんだね……」  大木戸が熱い息を吐きながら囁く。白根は男に見つめられながら陥落した。

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