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第4話

汗を綺麗に流してサッパリして、ベッドに入ったのが午後4時。そのまま夜の10時過ぎまで死んだように眠って、ぼんやりと目を覚ます。少し軽くなった体をベッドから起こすと、ソファの上でゴロリと横になったムクがいた。仰向けになって首だけをこちらに向けたムクがヒラリと手のひらを振る。 「おはよー、けーた。」 慶太は無防備にさらけ出された丸い額を、信じられない思いで見つめた。慶太が寝て、起きて、ムクがまだ部屋にいたことなんて1度もない。知らない間に部屋を出てどこかへ消えているのに。 思わずムクをじっと見つめてしまって、ムクが不思議そうに「なに?」と聞いてきた。 「いや、別に。」 どうせただの気紛れだ。 転がるムクを跨ぐように越えて、キッチンへ向かう。キッチンと言っても小さなシンクとガスコンロが1つあるだけのお粗末なもの。コンロの奥に設置した小さな冷蔵庫も中身は空っぽだった。現代の頼みの綱、インスタント麺すらもこの部屋にはない。グウグウと鳴る胃袋が不満を訴えている。 「腹減ったー、けど。買い物行かないとなんもねーな。」 時間的にまだスーパーは開いているだろうか。最悪コンビニで弁当でも買おう。面倒だな、とぶつぶつぼやきながら振り返ると、ムクが片手を真っ直ぐに上げて正座していた。 「僕も行く。」 「ムクも?」 またしても驚く慶太に、勢いよく頷くムク。 「買い物に?」 「うん!」 慶太よりも先に玄関へ向かっていくムクを見つめながら、今日は何だか調子が狂うなと苦笑した。別にムクと買い物に行きたくないわけではないが、何か違和感がある。慶太の中のムクは、いつだって気ままでマイペースで自分勝手だから。慶太が起きるのを待っていたり、買い物に着いてくると言い出したりどういう風の吹き回しなんだろう。 いや、単純にさっき追いかけられてたのがまだ怖いのか? 外は日差しがない分昼間よりも過ごしやすい気温まで下がっていた。ムクと並んで歩くのなんて初めてだ。慶太の肩程の高さにある旋毛を眺め、ムクが自分よりもこんなに小さかったことを初めて知った。 俺って本当に、こいつのこと何も知らないな。 まあ、別に。どうでもいいか。 「何食いたい?」 「刺身!」 「ふざけんな。」 勝手なことばかり言う野良猫の頭を軽く小突いて、2人仲良く肩を並べて深夜のコンビニへと向かった。

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