膝が胸につくほど脚を押し開かれ、後孔に熱いそれが押し入ってくる。 「あああああっ……んう……は、あ……はあ……ああ……！」 　みっちりと隙間を埋められて、腹の奥がじんと痺れる。腰から下の感覚が遠くなり、代わりに切ないほど熱くなっていく。 　挿入の衝撃で上手く息が出来ないイェークが慣れてくるのを待ちながら、シグルズは気遣うように首筋に唇を寄せてくる。 「っく……ん……大丈夫……」 　声が押し潰されたようになってしまって、本当に大丈夫なのかとシグルズの目線が疑わしげに向けられる。 「い、いいから、全部挿れて……。でも、ゆっくりな……」 　本当はまだ入り口がきつくひくついているし、張り出した先端で押し広げられているのが苦しい。力の逃がし方が分からなかった。けれど、それがシグルズだと思うから耐えられた。腰の奥の奔流が渦巻いていて、早くそこへ快楽が欲しい。 　ひとりでに浮きかけていた腰をシグルズが支え、ずるりと剛直が入り込む。 「あ、あぅ！　あぁッ、……」 　全身がびくびくと跳ね、足の爪先までぴんと伸びる。喉を反らせてぎゅっと目を閉じ、そこに大きな雄が穿たれていくのをじっと受け入れた。 「んんっ……」 　ずっしりと腹の奥に熱くて固いものが収まり、満足感に甘えたような声が漏れてしまう。シグルズの僅かな身じろぎが、イェークにとっては敏感になった粘膜への甘い刺激になり、浮いたままの背筋がふるりと震えた。 　丁度胸を突き出すような仕草になってしまい、好都合とばかりにシグルズの少し汗ばんだ指がそこを這う。 「そこ、そこはっ……」 　ふるふると首を振るのは、感じすぎて怖いからだ。人差し指と中指で突起を挟まれ、そのまま揉みしだかれる。 「ひ、……ぃ……！」 　イェークは眉根を寄せて、その武骨な愛撫を受け続けた。知らないうちに吐息は熱く乱れて、胸の刺激は直に腰に響くようになってくる。 「んぁ……シグルズ……お願いっ……ぃ、イかせて……」 　腫れ上がったままの花芯が、限界を訴えて雫を溢れさせながら震えている。先程から痛いくらいに張り詰めたまま放置されていて、ともすれば自分の手ではしたなく触れてしまいそうだった。せめてその前に吐き出させて欲しいと、羞恥に耐えて懇願する。それなのに、シグルズは耳元で残酷に囁く。 「……まだだ」 　あろうことか、涙を流し続ける花芯の根元を、陰嚢ごときつく戒めてしまった。 「あ、あ！　だめっ俺、もうっ……お願い……お願い、だからぁ！」 　許しを得たくて、夢中でその手の甲に爪を立ててかぶりを振る。それなのにシグルズはなおも腰を振り立て、柔らかくとろけた前立腺を容赦なく抉った。神経が焼き切れそうだった。 「あああーっ……ああ……！　ダメ、だめぇ！　……っ、お願……お願いイかせてぇ……」 　シグルズは上半身を起こして、ますます腰遣いを速めた。 「くうぅう！　……あっ、やっ……シグルズっ、シグルズ……！」 　縋るものを失くしたイェークは激しく揺さぶられながら枕の端を掴み、身体を捩る。逃げを打つようにずり上がるのを、腰を掴まれて引き戻される。 「ひ、ぅ、う……ん、ん、んんぅ、……んんんー！」 　達することを許されなくて高ぶり続けているので、シグルズのものを包む肉筒はきつく締まり、脈打つように痙攣する。 「あ――――ッ！　あァ――！」 　そんな中で一際強く、激しく押し付けるように最奥を突かれて、イェークは絶叫してしまっていた。そのくらい悦かった。 　ひっくり返った甲高い声が遠くで聞こえる。身も世もなく乱れて、泣きじゃくった顔で何度もかぶりを振る。悦楽の涙で顔は濡れ、恍惚感で焦点が合わない。 　力任せに捩られる乳首も何もかもがよくて、声すら出せなくなった後は酸欠のように口を開けたり閉じたりして喘ぐしかない。自分が揺さぶられているのか、浮遊しているのかも分からなくなっていく。 「……イくぞ」 　シグルズが抑えたバリトンで告げ、再び覆い被さってくると、力強く抱き締められた。頭が真っ白に染まっていく。 「シグルズ……！　しぐ、るず……」 　無我夢中で抱き締め返し、今自分を抱いている男の体温を全身で確かめた。その間も何度もいいところを突き上げられて、脚がひとりでにシグルズにまとわりつく。悦楽を貪る腰の動きを止めることが出来ない。 　胎内で暴れる熱棒が、一際大きく膨らんだ。シグルズが息を詰め、イェークの砲身から指を離す。奔流がマグマのように噴き出すと同時に、最奥に火傷しそうなほど熱い飛沫が叩き付けられる。 「っ……イェーク……」 「ふ、あっ、あ――――！　ア――――……！　あ……」 　細く長く、後を引くような射精だった。全身が痺れ、ぞくぞくする。散々苛め抜かれた身体は歯止めが効かず、とろとろといつまでも白濁が溢れ続けた。まるで粗相をしているような感覚に、イェークは泣きそうになりながら背筋を震わせ続ける。全く力の入らない腕で何とかシグルズに縋り、ようやく解放された奔流をお互いに心行くまで吐き出した。 　吐き出し終わって、ずるりと胎内から逞しいものが抜け出ていく瞬間は、まるで内蔵を引き抜かれてしまうような喪失感さえあった。 「ぁ……」 　一瞬、目の前が白くなり、急速に落ちていくような感覚に見舞われる。カクン、と首の力が抜ける寸前で、イェークは自我を取り戻す。 「っ、俺……今……？」 「飛びかけたか。そんなに悦かったのか？」 　揶揄して笑うシグルズの吐息に、またぞくりとする。 「あ……」 　まだふわふわしていて、シグルズの言っていることをちゃんと理解出来ないまま、笑っているならいいかと素直に頷く。 「俺に抱かれる素質があるということだな」 　こめかみに触れるだけのキスの雨を受けながら、ぼんやりと思ったことを口にする。 「そうかな……。シグルズの方が……俺のことめちゃくちゃ気持ち良くしちゃうから……じゃないかな……」 「……」 　キスの雨が一瞬止まり、それを不満に思ってこちらからすり寄っていく。シグルズが何か言いたげにしていたが、よく聞こえなかった。 　のしかかっていた身体をずらしてシグルズはイェークの隣に寝そべり、イェークはその腕枕に収まった。余韻と少しの眠気が心地良くて、うっとりしていると、シグルズは髪を撫でてくれる。そして、聞き取れるぎりぎりくらいの小声で呟いた。 「すまなかった、と思っている……」 　焦らして焦らしてイェークを泣かせたことかと思っていると、シグルズはもっと真剣な顔をしていた。 「後悔している……。最初に、お前を手酷く抱いたこと」 　優しいというよりはこわごわとした手付きでイェークを引き寄せて、シグルズはトーンを落としたまま話す。