6 / 17

case 藍 2

 ベッドサイドのランプを点けて、真臣は藍の身体を検分する。藍は恥ずかしそうな顔をしながらも、逆らわずにされるがままになっていた。  藍の身体は綺麗でどこも汚れてはいなかったが、シーツには点々と体液の散った跡があった。また、下着も着けずに露わなままだった菊門に触れると、そこはしっとりと湿り気を帯びて柔らかかった。 「藍……」  指の腹で優しく恋人の菊門を撫ぜながら、真臣は囁く。 「俺がいない間に、誰に何をされたんだい?」  藍は顔を赤くして、泣きそうに眉を下げた。 「し、知らない男の人に、両手を縛られて…………お尻を……犯されました……」 「……怖くなかった?」  藍は首を横に振った。 「真臣さんのこと、言ってたから……」  真臣は微笑んで、藍の唇に口づける。そうすると甘えるように唇を吸ってくるのが可愛かった。  その道の玄人達に丹念に仕込まれ、男を求める身体になるよう躾けられた藍は、性的な愛玩に最適なばかりではなく、愛玩されなければ飢えてしまうほどに、快楽を教え込まれていた。  そしておそらく藍は生来マゾヒズムの性質を持っていて、それが調教の過程で大勢の男達に犯されることで歪んだのか開花したのか、彼の性的欲求は辱められることで満たされる部分が多分にあった。  この恥じらい深い恋人は、真臣以外の男に組み伏せられ、犯されて、辱めを受けたいという願望を持っていた。そして、それを真臣は知っていた。  もちろん、本人が自ら進んでそんなことを告白したわけではない。  藍のマゾヒズムの傾向はすぐに感じ取れたけれども、それを満たすために何をされたいのか、藍は頑として言わなかった。それでも恋人の目の奥に満たされぬ欲があり、それが彼を苛んでいるのは見ていればわかった。  だから真臣は、身体で白状させたのだ。  玄人に仕込まれただけあって藍はとても感じやすくて、真臣に抱かれて果てないことはなかったし、感じすぎて泣き出すこともままあった。そんな身体の藍を、ある晩真臣は執拗に抱いた。藍が精を吐いても、中でイッても、構わずに感じやすい場所を突き続け、指と唇とで性感帯をなぶってやった。  当然藍は泣き喘いで許しを乞うた。それでも真臣が責め続けると、耐えかねて腕から逃れようとした。それを抱き締め、逃れられないようにして、真臣は恋人の耳に囁いた。本当に望んでいるいやらしいことを全部白状するのなら、責めるのをやめて甘やかしてあげる。藍がどんなにいやらしくても真臣は藍を離さないし、藍はずっとこの家で真臣に愛されて暮らすのだと、藍の理性が音を上げるまで、優しく囁きながら身体の奥の弱い部分をゆっくりと突き続けた。  藍は泣きじゃくって、そんなの言えない、許して、と哀願したが、やがて震えながら真臣にすがってきた。そして涙ながらに、男に犯されて汚されて辱められたいと告白したのだ。菊花処でされたように、抵抗できないように拘束されて、見知らぬ男の性器を尻に突き入れられて中で射精されたい、と。  そんな願望を余さず口にさせて、なかなか泣きやまない藍を真臣は慰め、眠りにつくまでその身体を優しく撫でてやった。  藍が真臣に操を立てていることを、真臣はよく知っていた。藍は本当に従順で、真臣に自分のすべてを捧げたいのだと言わんばかりだった。  しかし真臣も藍が愛しかったし、満足させてやりたかった。我慢などひとつもさせずに幸せにしてやりたかった。  だからある日、その道に通じた男を呼んで、目の前で藍を犯させたのだ。  藍は嫌がり、抵抗し、真臣に助けを求めた。真臣は震える恋人に口づけて、いい子だから素直に気持ちよくなりなさいと囁いた。すると藍はとたんに耳まで赤くなって、男に抵抗しなくなった代わりに、恥ずかしいから見ないで、と言って、その表情を羞恥に染めた。そのときの藍の姿は愛らしく美しくて、真臣は感動すら覚えながら、藍が男に犯され、喘ぎ、甘く鳴いて、精を散らすのを見つめていた。  それからというもの、真臣は折々に男を雇っては、藍を辱めた。それを何度繰り返しても、藍はその様子を真臣に見聞きされることに強い羞恥を感じるらしく、その様は真臣の欲をもくすぐった。  そして今夜もまた、藍は真臣の思惑の通りに、真臣と愛し合うためのベッドの上で、見知らぬ男に犯されて果てたに違いなかった。  真臣は藍が唯一まとっていたシャツのボタンをひとつひとつ丁寧に外して、美しい身体をランプの灯りに晒した。裸体を眺め回されて、藍は顔を背けて目を伏せる。たったこれだけのことに羞恥を覚えるくせに、その内には卑猥な欲望を抱えているのがアンバランスで、哀れでもあり、いっそう彼を愛してやりたいという気持ちになった。  藍の中で羞恥の強さは快感の強さとリンクしてしまっていて、藍はその強すぎる快感に逆らえなくなってしまったのだろう。恋人に裸を見られることすら恥じらう彼にとって、日々調教を受ける恥ずかしさは想像に余りあった。

ともだちにシェアしよう!