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case 康 1

 (こう)が初めて(あきら)に抱かれたのは、ホテルのラウンジを貸し切って行われたお披露目の日だった。  調教を終えて、従順に雄を受け入れて悦ぶ『商品』になった青少年らを贔屓の客に見せ、その場で仕上がりを確かめさせるのがお披露目だ。  初めて暁を見たときは、ずっと大人であるようにも、とても若いようにも見え、その目の鋭いのが怖くもあり、美しくも思えて、胸が騒いだものだった。  その暁が自分を抱くのだと知って、康の下腹部はすぐさま熱を持った。服を剥がれ、脚を割られ、菊門を濡らされる頃には、ペニスはすっかり勃ち上がって、興奮を主張しているのが恥ずかしかった。  他の客が見ている前で、暁が自分の上に被さって、その猛った雄で貫いてくれたときは、たまらず声を上げてしまった。その熱も硬さも嬉しくて、抱きつく勇気が出ない代わりに精一杯締め付けた。  腰を打ち付けられるともうどうしようもなくて、身をよじって喘いで、しまいには暁よりも先に射精してしまった。  ぜいぜいと息をつく康の頬を撫でて、暁は言った。 「お前をもっと躾けてやりたいな」  それは独り言のような口調で、そのときの康はその意味を理解していなかった。  その後は康が状況を把握しないうちに、暁が康を買う話がまとまって、康は暁の家に迎えられた。  マンションの広い部屋に一人で暮らしていた暁と、その部屋で二人きりになった始めは、どんな扱いを受けるのだろうと不安にも思ったが、なんのことはない、暁はごく普通に康を同居人として扱った。  要望や不自由や文句は言ってくれて構わないし、好きに生活してくれていいと暁は言った。  そして念を押すような口調で、躾はベッドの上でしてやると言われた。  その意味はもちろん、すぐに思い知らされた。  康は顔立ちこそ少しばかり幼いところがあったが、それでも決して女性的な顔つきではなかったし、それは身体つきも同じことだった。声も高くはなく、ごく普通の声変わりを経た青年のそれだった。  暁は康の生活態度にも、服装にも、自分の趣味を強いることはしなかった。だから康は数ヶ月の調教の日々がまるで夢だったのではないかと思うほど、ごく普通の生活を始めることになった。  ただ、暁にベッドに呼ばれると、それは甘い情交の時間でもあり、つらく恥ずかしい調教の時間でもあった。  暁は、もっとメスらしくしろと言って、康が射精することを許さなかった。物理的に射精を阻害することはせず、しかし行為の間は決して康の男性器には触れず、康が自分で触れることも禁じた。それでも康が菊門を突かれる快感にたまらず射精してしまうと、ちゃんとメスイキしろと言われて、精子を吐いたことをなじられ、康が泣いて悲鳴を上げるまで犯されて、エネマグラを挿入された。  責め苛まれた康が泣きながらメスイキすると、それでいいと抱き締められ、髪を撫ぜられて、優しく甘いキスをされた。  暁に優しくされるとひどく胸が温まって、とても逆らえないような気持ちになった。康は甘えたい心を抑えきれなくて、暁の口づけと抱擁をねだったし、暁はそれに応えてくれた。暁と自分の関係が何なのかわからなかったけれど、暁はまるで兄のようでもあり恋人のようでもあり、保護者のようでもあって、康の心の垣根は不思議なほど取り払われていった。  そんな暁に調教を受けることは、かつて施設の中で受けたそれとは異なっていた。  暁に叱られるのは切なくて、期待に応えられないと悲しかった。責められて泣きながら、自然と謝罪の言葉がこぼれたし、許しを乞わずにはいられなかった。そして最後に震える身体を抱き寄せられて優しく撫でられると、つらい責めもまるで愛でられていたかのように錯覚した。  暁の腕の中で微睡むのはとても心安らかで、あの施設での長かった調教の日々はすべて暁に抱かれるための準備だったのだと思うと、そこには腑に落ちるものがあった。  暁への気持ちが恋なのか違う思慕なのかわからないまま、康は身も心も暁に染められて溺れていく自分をどうすることもできなかった。  快感を教え込まれた己の菊門を貫いてくれるのは今や暁しかいないのだという事実もまた、康を溺れさせる一因だった。

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