2 / 9

第2話 ある男性の訪問

ピンポーン ご飯を食べている時、不意にチャイムが 鳴った為雅文はインターフォンの画面を見る。 そこに映っていたのは、一生忘れることが 出来ない相手だった。 「奏多、ごめん。自分の部屋に戻ってて くれないか。お客さんと話さないと いけないんだ」 「分かった」 雅文の顔色が少し悪いことが気になったが 奏多は部屋に戻った。 「雅文、雅文!」 ドアを開けた途端、待っていた男が 雅文を抱き締める。 「・・どうして、来たんだ。俺は お前とはもう会わない・・」 「何を言ってるんだ、雅文。お前は 俺から逃げられると思っていたのか? あれから俺はお前を監視する為に 使用人を送らせた。まさか本当に 相手がいたとはな、驚いたよ。 でも、彼女はもうこの世にはいない。 だからここに来たんだ。お前をもう一度 俺のものにする為に」 男は雅文の腕を掴み、抱き寄せ口づけをした。 雅文は離れようと胸板あたりを両手で 押したが全く離れようとしなかった。 「・・美澄、いやっ。隣に子供がいるんだ」 「あぁ、奏多くんか。ここで犯されるのが 嫌ならどうすればいいのか分かるよね 雅文」 「・・はい」 雅文は奏多を呼び、美澄が待っている車へ 向かった。 「父さん、この人は誰?」 「私の名前は高橋美澄です。君の父さんとは 古い付き合いでね、若いときは一緒に 働いてたんだ」 「じゃあ、美澄さんもお医者さんなんだね。 父さんは若い頃から凄いお医者さん だったの?」 「あぁ、そうだよ。君の父さんはとても 優秀だった。誰もやりたがらない手術も 完璧にこなしていた」 奏多は雅文から昔の話は聞いたことが なかった為、美澄から聞く話はどれも 新しいことばかりだった。 「外で話すと寒いから、車に乗って 話をしよう。今日は奏多くんに 会わせたい子達がいるんだ」 「会わせたい子?」 「そう、奏多君に会うことを待ち望んで いるんだ」 笑顔で答えているのに、どこか不気味さを 感じた奏多はふと父を見ると微かに手が 震えていた。

ともだちにシェアしよう!