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第8話雅文の苦労

「雅文先生、院長がお待ちです」 長時間の手術が無事成功し、医局で休憩を している最中に美澄の秘書が来た。 重たい身体を何とか立たせ院長室に 向かった。 「院長、雅文先生をお連れしました」 「分かった。君はもう帰っていいよ」 扉を開け中に入ると、すぐ目の前に美澄は 立っていた。雅文の腕を掴みソファーに 座らせた。 「今日もお疲れ様、完璧な手術だったよ。 モニターを見ていた医師達も釘付け だった」 「美澄、俺は外科医を辞めた。それなのに 何故俺を外科部長にした」 雅文は慢性的なめまいや頭痛があった為 外科医を辞めて、内科の医師になった。 しかし、美澄はあろうことか雅文を 外科部長に任命したのだ。 「雅文の手術は誰も真似できない。 外科医を辞めても、講義や論文を 見ていた事は知っていた。だから 体調を考慮しながら外科に入れないか 考えた結果、外科部長にしたんだよ。 俺には未練があるように見えたんだ」 「お前気づいてたのか。久しぶりの手術で 緊張したが、身体は覚えていたみたいだ」 「雅文の事は何でも分かる。もう仕事は 終わりだろう、一緒に帰ろう」 着替えを済ませ、美澄の車に乗り家に帰る。 最初は美澄に対し抵抗していたが、今は もう抵抗する気力は無くなっていた。

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