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日誌・19 ちゃんとあげよう(R18)
思った時には、もう決めている。
どうしてそういう考えを思いつくのか。
素面の時では想像もつかない。
だいたい、秀のモノの大きさにドン引きしたのは、つい先ほどだ。それなのに。
もう平気になった、どころか、コイツでどうやって楽しもうか、と新たな境地にわくわくし始めているのだから、雪虎の性欲は始末に負えない。
準備とばかりに、まだソファの上に転がっていた潤滑ゼリーの容器を、雪虎は手に取った。
自身の掌に中身をぶちまける。そこでようやく秀の視線が雪虎の顔に戻った。
その表情に、雪虎は、ニンマリ、笑う。
なにせ。
秀は、どうにか理性にしがみついている、と言ったどこかぎりぎりの表情を晒している。
この男を翻弄しているのが自分かと思えば。
―――――楽しくてたまらない。
ざまあないな、と嘲りながら、もっと追い詰めてやろうと悪い考えを抱く。
雪虎はぬるついた手を、背後へ下ろし、…自分の尻の間に伸ばした。
肉の谷間に、たっぷり塗り付け―――――さらに奥のすぼまりに、指を伸ばす。
「な、会長」
自分で自分の入り口を撫でた。
今まで一度もセックスで使ったことはないソコは、固く閉じている。
ああ、もどかしい。
大きく息を吐きだし、ぬるつく指を一本、中へ潜らせた。妙な感触。
だが、問題なく挿入った。幸い、前が萎えるような気持ち悪さはない。息を喘がせ、挑発的に微笑む。
「…はっ、も、どうせなら…、筆おろしも、済ませましょう」
それでも。
さすがに、跳ねのけられるかと思った。
はじめれば快楽に素直になるが、秀にはどこか、潔癖そうな部分もあるからだ。
拒絶が返ればそこまでだ。そう、思ったのに。
「…ならば」
いきなり、ぬるつく秀の掌が、雪虎の尻を左右から鷲掴みにした。
その、唇が、挑戦的な笑みの弧を描く。
雪虎は内心、ギョッとなった。
「ん…っ」
尻肉を、秀は下方から持ち上げるように、動かした。
搾り上げるようなやり方で。
そのまま、ゆっくりと、意味深に左右に押し開かれる。
割り開いたまま、肉を餅でも捏ねるように上下に動かしながら、秀が抑えた声で言った。
「私が、解す」
直後、雪虎が連想したのは、秀の指の太さだ。
彼の指は一見、繊細そうに見えるが、骨ばって、なかなか立派なものである。大きい身体に遜色のない造作。
いきなり、狭いソコへ入れられたいモノではない。
咄嗟に、秀の興味をそこから逸らそうと、雪虎は別のことを言った。
「その前に…暑いんです」
実際、エアコンが効いた室内と言うのに、雪虎も秀も誤魔化しようなく汗ばんでいる。
「シャツを脱がしてくれませんか」
その間に、身体の準備が整えられたらいいのだが、と慎重に、指で中を探った。
一拍の、間を置いて。
秀は無言で、従う。
雪虎のシャツのボタンに手を伸ばした。上からゆっくりと外し始める。
見れば、身に着けていた雪虎のシャツも、秀の着物も、潤滑ゼリーや放ったもので汚れてしまっていた。
だが、ここまで身体が出来上がっていると。
汚れがむしろ気持ち良い。もっと汚れたい。もっと汚したい。
立ち込める双方の匂いにも、もう媚薬めいた効果しかない。
早く、と急く気持ちのままに、雪虎は挿入した指の数を増やした。拍子に。
雪虎の身体が、はわずかに前のめりになる。
慌てて、自由な片手を前に出し、秀の腹の上についてバランスを取ろうとするなり。
勃起しきっている二人の前が擦り合わされた。
ぎくん、と互いの身体が強張る。
思わず喘いだ。
「ぁ、は…っ」
「く、ぅ」
また、覚えたての猿のように腰を振りたくなる衝動を雪虎が堪えた瞬間。
秀が、何かをよく見ようとするように目を細め、熱を孕んだ息をこぼし、
「…こんなところまで、尖っている」
シャツの前を開くことで、露になった雪虎の胸元に手を伸ばした。
そこで、痛いくらい屹立している小さな粒を、指の腹で、あやすように優しく撫でる。
「え、あ…っ?」
とたん、雪虎は戸惑った声を上げた。
尖り切って主張するそれを、コロコロと転がすように弄り回されると、
(あぁ…クソ…っ)
もどかしいような疼きが、そこから背骨を伝って、腰にまで響いてきた。
雪虎にとって、未知の感覚だ。彼はそれまで、そこが気持ちいいと思ったことがない。そんなものを覚えては危険な気がするのに。
気付けば強請るように、胸を突き出していた。
最初はただ誘われたようだった秀の指が、とたんに、大胆になる。
木の芽でも摘み取るようにつまむなり。
「ひぅ…っ」
強い刺激に、雪虎はつい、奥歯を食いしばった。
秀は、時には引っ張るように、時には捻るようにしながら、指の腹で小さな肉芽を揉み続ける。
とうとう、それだけでは飽き足らなくなったのか、乳首を指の間にしっかりと挟んで、胸全体を掌で感じながら揉むように動かした。
男の胸だ。柔らかくはない。
なのに執拗にこね回された。そう、され続けていると、―――――最初以上に、敏感さが増していく。
最中、前を広げただけで結局身に着けていたシャツの左肩が、ずり落ちた。その感触に、雪虎はどうにか、微かに正気を取り戻す。
そろそろ整っただろうか、と後ろの穴をいじっていた指を引き抜く。
潤滑ゼリーのせいか、中が、抜き取る指に絡みついてくるようで、たまらず身をよじる。
コンドーム、と頭の片隅で考えるが。
快楽で茹だっていた頭が、短絡に結論―――――もう、いいか。
決めたら、行動は早かった。
身体の下の、秀自身に雪虎の指が触れる。いとしいもののように。
指先で、下からなぞり上げるように輪郭を辿れば、秀が息を詰めた。
こぼれる体液の源泉にたどり着き、先端を丸く丹念に撫で上げれば、
「だめだ、トラ」
遊びのない声で制止、切羽詰まった秀の目が雪虎を射抜く。
「弄るな…耐えられん」
その間にも胸から手を離さない秀に、雪虎は薄く笑って。
「そういう、素直なところ、好きですよ」
言うなり。
何に、驚いたのか。
秀が、わずかに目を瞠る。探るように、雪虎を見上げた。
その表情が、―――――得られない何かを、必死に乞うようで。
得られるためならなんだってするんじゃないだろうかと思わせるほどの、その真摯な秀の表情は、雪虎の暗い気持ちを満たす。
最高だな、と薄く笑って、
「さあ、会長」
雪虎は、自身の身体をわずかに持ち上げた。次いで、位置をズラす。前へ、少し乗り出すように。
雪虎は、つい先ほど、触れあっていた陰茎を―――――前へ突き出して。
秀の育ち切ったソレを片手で支え、その先端を後ろにあてがう。
大丈夫だ。
挿入なら、幾度か経験がある。
される側は、はじめてだが。
「一緒に、―――――遊びましょう?」
そのまま、雪虎は。
足から力を抜いた。
ぐっと自重がそこにかかる。
たちまち、未知の圧迫感に、雪虎は息を詰めた。
対して秀は、雪虎のキツい締め上げに、気持ち良さより痛みが増す。
はじめてなのだ。もちろん、すんなり、挿入が進むわけもない。
知らず、雪虎の下腹に力が入った。
意識して、息を吐きだしながら、力を少しずつ抜いていく。
幸か不幸か。
たっぷりと施されていた潤滑剤、それから互いの体液もあり、びっくりするほど滑りはよくなっていた。
圧迫に戸惑う間にも、秀の一番太い部分が、雪虎の縁から中へ納まっている。
「は…っ、うそ、だろっ」
雪虎の思った以上に、飲み込みは、早かった。その上。
反射的に、雪虎の身体が逃げを打つなり。
秀の両手が、雪虎の腰骨を左右から掴んだ。刹那。
「…許せ」
秀の、余裕ない低い声。
その腕の力が雪虎に逃げを許さず、引き寄せ。さらに―――――秀が真下から、思い切り腰を突きあげた。
「―――――ぃ、待…っ」
待ってくれ。
口にする間もない。
いっきに、根元まで。
秀が、雪虎の中に納まった。
奥底へガツンときた衝撃に、雪虎の意識にぽかりと空白ができた、と感じるなり。
ばちっと、目の奥で星が散るような気がした。
雪虎は声もない。
ただ喘ぐように唇を何度か開閉する間にも、ぐりぐりと腰を押し付けられた。雪虎の、もっと奥を探るように。とたん。
身体が硬直してろくに動きようもないのとは裏腹に、雪虎の中が、激しくうねった。
秀のモノに、飢えたようにむしゃぶりつく。
たちまち、秀が、ぎくりと、動きを止める。同時に、雪虎の中の彼自身がさらに膨らんだ。
とたん、雪虎の背が弓なりに沿った。
一瞬、秀は達しそうになる。だが、ぎりぎり、堪えた。
そのすべてを否応なく感じながら、雪虎の頭の片隅で、コンドームをしていないことが思い出される。
中に出されるのは、抵抗があった。
考えただけで、微かに震える。とはいえ。
「あ、…ぁっ」
自分の体重で呑み込んだのだから、足に力が入らない今、逃げようもない。
しかも、
(―――――どうしよう)
気持ちがいい。たまらなかった。小刻みの波が、幾度も幾度も、奥からくる。
まだ、圧迫感や違和感の方が強いけれど、…間違いない。
後ろに、ぎちりと満ちた感覚に、雪虎の身体は、急速に順応し、慣れようとし始めている。
雪虎の頭の中で、やばい、と言葉が繰り返された。
これは、危険だ。
何がって。
そもそも、雪虎は快楽に弱い。
―――――こんなものがクセになっては困る。
幸い、この、性質が悪いイチモツを持つ男は、性行為に慣れていない。
覚えの早い秀が、雪虎さえ知らない雪虎の弱いところを探し出す前に、―――――終わらせなければ。
だがもう、雪虎の身体は、貪欲に快楽をむさぼろうと、していて。
「…動く」
秀の、荒っぽいが律儀な宣告に、
「いや、会長、ちょっ、」
もう少し慣れるまで待ってくれ、と言いさし、すぐ言葉を飲み込んだ。
慣れたらもっと、危険になりそうな気がした。
そして、秀は―――――雪虎の言葉を待たなかった。
ソファの上。
いきなり、ぎりぎりまで引き抜かれた感覚に、息が詰まりそうになる。
わずかに残った先端を、入り口が、引き留めるようにきゅうと食いしめた。
「う…っ、待て」
達しそうになったか、秀が苦し気に雪虎を制止。
だが、身体が勝手に動くのだから、雪虎にはどうしようもない。
雪虎と、秀の目が合った。
咄嗟に、雪虎は首を横に振る。情けないが、たぶん、涙目だった。
秀は、珍しく、微笑んだ。優しげに。…慰めるように。
「大丈夫、ちゃんとあげよう。…どんなに嫌がられても、ね」
そんなものは、求めてない。
当然、雪虎の心の声は黙殺される。秀は、直後に。
「―――――んぅ、あ、ぁっ!」
加減なしに、剛直を突き込んだ。
雪虎の背に走ったのは、女性なら、きっと壊れている衝撃。
堪えようもなく、仰け反った。後ろに倒れ込みそうになるなり。
手首を掴まれる。
力いっぱい、引き寄せられた。とたん。
結合が、深くなる。本当に、ぎりぎりのところまで。
「はぁ、…っ!」
衝撃に目を見開いた雪虎に頓着することなく、はじまったのは、忙しない抜き差し。
雪虎は、為すすべなく翻弄される。ついていくので、やっとだ。
反撃など、思いつきもしない。
できることと言えば、すすり泣くように息を吐き、悶えるように、腰をくねらせることだけ。
身体が弾むたび、触れられていない雪虎の陰茎が、濡れそぼり、半ば勃ちあがったまま、上下に揺れた。
「すまない、トラ」
最中に、息を弾ませながら、着物をはだけた秀が切羽詰まった声で告げた。
「余裕が、ない」
とはいえ。
この激しさが、長く続くわけがない。
あと少しの我慢だ、と容赦なく与えられる快楽に溺れそうになりながら、高をくくり、正気の境界にどうにかとどまり続けた雪虎は。
おかしくなるから放してくれと泣き叫んだ挙句、―――――ほぼ半日、力づくで組み敷かれた。
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