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日誌・77 怖かった(R18)

いっきに、秀の先端が後退。 途中、雪虎の柔い袋を捏ねるように、して。 小刻みな息を吐き出しながら、 「トラ、」 ふと、秀が何かを言いさした。 (…なん、だ?) 意識を向けた雪虎に、―――――結局何も言わず。一拍の沈黙の、のち。 無茶苦茶な勢いで、抜きさしが始まった。荒い呼吸と同じリズムだ。 勃ち上がった雪虎の性器もこすられ、たまったものではない。 衝撃に耐えるべく、木格子に、両手でしがみつく。 「あ、ぁ!」 腿の間に差し込んでは出ていく秀のソレに、雪虎は無意識に自身を押し付けた。 あっという間に、雪虎の陰茎や内腿が互いの先走りでぬるぬるになる。それとも。 これは、潤滑剤だろうか。 雪虎の下の口を、秀の指の腹が、執拗に撫でさすっていた。 小動物でも慎重にかわいがるような動きだ。新たに潤滑剤を注ぎ足しながら、 「小さい、…な」 呟きが聴こえた、と思うなり。 つ、ぷ。 「んん…っ」 ぬるつきの助けを借りて、案外とすんなり、秀の指が雪虎の中へ入ってくる。 慎重に中へ潜る動きに合わせ、雪虎の背を、ぞくぞくと寒気に似た快感が駆け上がってきた。 ―――――たまらなく、ヨかった。 入り口をこすられるだけで、あれだけ気持ちが良かったのだ。 中はどれだけ…、いやそれ以上に―――――奥は。 だがやはり、まだ狭い。 秀は、粘膜の肉壁をゆっくりと指の腹で舐め回すようにしながら、一度、根元まで埋めた。 同じ、動きで。 ただし今度は幾分か性急に、根元まで埋まった指を、秀が引き抜いた。 つぽ、と栓でも抜けたような音が上がった拍子に、喪失感に雪虎の下腹が疼く。 入り口が、切なそうにきゅうと締まった。 その間にも、秀のイチモツが雪虎を壊そうとするような勢いで腿の間を出入りしている。 先走りと潤滑剤のせいだろう、クチュ、ズチュ、とひっきりなしに濡れた音が上がった。 木格子にしがみついた体勢で、雪虎は顎を引き、俯く。 「や、…あっ」 下肢を震わせ、悦楽をひとつも隠さない声で喘いだ、刹那。 「…くっ」 低い声を上げ、雪虎の背に秀が伸しかかってくる。同時に。 ―――――秀が、放った。 腿の間に押し込み、雪虎の陰茎に重なった秀のソレが、勢いよく射精する。背後から回った秀の腕が、強く雪虎を掻き抱いた。 拘束の強さと裏腹に、秀の腰が崩れ落ちるようにぶる、と強く震えたのが伝わる。 秀の体液が、雪虎を汚し、木格子を汚し、畳に滴った。 それでもまだ秀の腰が緩く動き続け、また新たに吐きだされる。 ―――――それが、何度、続いたろう。 秀が、食いしばった歯の間から、荒い息を繰り返し吐き出す。 ようやく動きは止まったものの、秀自身は、まだ硬度を保ったままだ。 つい、雪虎は足の間に手を伸ばす。自分のモノと共に秀に触れ、呟いた。 「は…っ、ガッチガチ…」 雪虎の呟きに、か。触れた指先に、か。 どちらに感じたか、雪虎を抱きしめたままの秀の身体が震えた。 互いに、まだまだ終われそうにない。 「―――――トラ」 何かを促すような声と同時に、秀の、抱きしめる力が弱まった。雪虎が顔を上げる寸前。 「…え」 ひょいと身体の向きを変えられる。雪虎は面食らった。 秀の態度が、小動物でも扱うような軽々としたものだったからだ。 雪虎は成人男性だ。平均以上の身長もある。 そこらの猫と同じように扱えるものではない。 もちろん、雪虎は知っている。 昔はともかく、思春期を過ぎてから、秀の体格は群を抜いていた。 骨格からして、違う。 だが、それ以上に。 ―――――鍛えているのだ。 …真正面にある、浴衣のはだけた秀の身体を見れば、もはや悔しさも湧かない。 完璧だ。白旗を上げるほかない。 ぎりぎりまで引き絞られた肉体。 かと言って、ゴツゴツした巌めいた印象はない。 だがしなやかというのでもなく―――――格式高い端正さがある。それでいて、どこか禁欲的。 成長期前の、少女のようだった面影は、何ひとつ残っていない。 今のように、足元のランタンのうっすらした明かりだけがある状態、というのが、濃い陰影を肉体に描き出し、さらに体格の良さを視覚から思い知らせてくれる。 先ほどは、秀の拳に殴られたら痛いだろうと思ったが、おそらく、現実は。 (死ぬな) 雪虎は確信した。 これなら、雪虎程度、軽く扱えるだろう。 認めざるを得ない。同じ男から見ても、格好いい。 素直に感心して、秀を見上げれば。 「…顔を見ながら、したい」 子供がお願いするような稚い表情で言われ、面食らった、矢先。 「―――――ぁっ?」 正面から、雪虎のわきの下を通って、背後に伸びた秀の手が、雪虎の尻肉を押し広げる。 その指が、中心に沈められるのは、すぐだった。 ぬるり、と入り込んだ指が最初の慎重さをかなぐり捨て、いっきに根元まで埋まる。 「う、…っ」 もっとゆっくり、と願おうとして、言葉に詰まった。 秀が、ぐっと雪虎の腰に腰を、擦り付けたからだ。 ぬるつく陰茎が、二人の身体の間で、重なる。 たまらなかった。 「…は、はぁ…っ」 心地よい痺れが、雪虎の全身を支配する。肌が粟立つ。 さざ波に似た痙攣が、何度も全身を襲った。 誘われるまま、雪虎からも腰を押し付けた。 無茶苦茶に求めあっているようで、不思議と、秀とは呼吸が合うのか、確実な快楽がせりあがってくる。 ―――――果てるのは、早かった。それでも、萎えない。 放たれた互いの体液が、腹を伝い落ちていく。 雪虎がぼんやりとその感触を意識で追った、刹那。 「…ぅ、わ」 雪虎の視界が回った。 気付けば、畳の上で仰向けになっている。 ランタンの明かりは、足元の方にあった。身体の上にのしかかる体勢の秀の表情は、見えにくい。 雪虎の身体に、痛みや衝撃が何一つなかったのは、秀がそれだけ丁寧に雪虎を扱ったということだろう。 思わず畳を掻くように動かした手に、布の感触が触れた。 すぐ、気付く。身体の上にいる秀が、羽織を着ていない。 つまり、雪虎の身体の下に、敷かれているのは。 と、思うなりむず痒くなった。 「…この中に、トラの背中を見つけた時」 ふと、呟くように言った秀の声が、力ないように感じて、雪虎は目を瞬かせた。 ―――――この、中? つまり、座敷牢のことか。 「少し、―――――怖かった」

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