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07
結局。
片っ端からハル行きつけの店をつれ回されてようやくお眼鏡に叶う新しい服を一式揃える頃には、外はすっかり暗くなっていた。
気がすむまで俺を着せ替え人形にしたハルは上機嫌で俺の荷物を持ち、鼻唄混じりに歩いている。
買ったのはネイビーのテーラードジャケットと、襟とボタンが青で縁取られた白いシャツ。それからベージュの細身のパンツとヒールの高い黒のブーツだ。
ハルには今度会う時に着てくるようにと、念を押されている。
ま、いつものことだ。
センスはいいけど、ハルってこだわり強いんだよね。特に色味。俺にはもう名称が合ってんのかもわかんねーよ。白黒黄色。
流行だってあんま追わない。
髪なんか弄らせたらなげーから俺いっつも寝てっし。そんかし完璧だけど。
今は飲みに行こうということで、俺の予定通り行きつけのバーに向かっているところ。
新作のカクテルを味見させてあげるから、とマスターにお誘いいただいたのだ。
俺は知り合いが多いから、こうしてお呼ばれすることもままある。
そんなわけでダラダラと歩いていると、突然ポケットの中のスマホが震えて、一瞬ピタリと足を止めた。
俺の前をサッサと歩くハルから視線をはずし、めんどうながらスマホを取り出す。
画面に映った文字列を見て、俺はおもむろに目の前のハルの首根っこをグイッと引っ掴んだ。
「ゔぇっ」
「あはっ、カエルが潰れたみてーな声ってそんな声っぽいわ」
当然、シャツの襟に首を絞められる形になったハルの口からは、絞り出すような悲鳴が上がる。
おもしれー声。
掴んでいたシャツの襟ぐりを離してケタケタと笑うと、ハルは若干涙目になって俺を見た。
「ゲホッ、……さーきー? なんなんだよ」
「ロストークのマスターからメール有り。急用につき本日おやすみなり」
「わーお」
うらみがましそうなハルに、笑ったまんま謝りもせずスマホの文面を読み上げると、棒読みの返事を投げられる。
一瞬で行き先を失った俺たちは、迷える子羊と化したのだ。
マスターに了承の返信をしながら、道端で立ち止まる。
トットとスマホをいじくる俺を、ハルはちょいちょいと腕を摘んで呼んだ。
「な、他行きてえとこあるか?」
「んー? ん、んー……ポテサラ食いたい」
「なんでピンポイントでポテサラ? すっげサイドメニューだし」
行きたいところを聞かれて食べたいものを返した俺を責めることはないハルだったが、内容にじとっとした視線を寄越す。
それは俺が今食いたいから。
ちなみにジャガイモがごろっとしたやつな。生の玉ねぎ入ってたら萎えるけど、辛味抜いた玉ねぎ入れてくんなかったら食わない。ベストなやつをお願いね。
そう説明を付け足すと、んな細かいチョイスねーよ、と肩を叩かれた。
まじか。じゃあなんもねーわ。
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