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しかしマジうめえね。
ベーコン厚切り派とか、ショーゴはどこで知ったんだろう。
言ったことがあったかもしれないが、俺はいちいちそんなこと覚えていない。
刹那的に生きているのだ、俺は。
ってのも、今考えた。あはは。
早くも二本目の酒に突入しているハルがポテサラに興味を示してきたから、一口わけてやる。
ハルはなかなかうまいじゃねえの、と満足げに口元をもごもごさせた。
でもスーパーのマッシュしすぎてクリームみたいになったポテサラがハルは好きだから、俺の好みに合わせたこれは普通っぽい。
「んん……これは今度抱く時、ちょっとぐらい甘やかしてやんねえとなぁ」
図体ばっかしでかい駄犬の、真っ黒い髪の隙間から覗く甘えたな瞳を思い出して、ごほうびを考える。
甘やかす。
んー……。
改めて考えると、俺はショーゴに甘いセックスなんてほとんどしたことがないことに気がついた。
いや、俺は一夜の相手もセフレもその他もちゃんとかわいがっているから、かわいいとは言っている。
割と褒めんよ、俺。
かわいいと思うしキレイだと思うし面白いと思うし、思ったことを出力する。
しかし所謂ラブラブセックスとやらは、したことがない。
どうすりゃいいんだろ。
とりあえずおねだりを叶えてやればいいかしら。いいよな。
勝手にそう結論付けて思考を止めた。
まあショーゴに聞いて説明させりゃいーや。シてほしいこととセリフと挙動、全部つまびらかにさ。
口元についたポテサラをぺろりと舌で舐めると、ハルがぼへっと俺を見つめる。
「そいや、お前は人種性別年齢問わねーウェルカムなやつだったなぁ」
「んー? まあね。俺にとっちゃあそんなもんは些末な問題にすぎねーの。どうでもいいね、心底」
しれっと吐いた。
俺にとっては興味を持てるかどうかのほうが、よっぽど重要。
普通に女が好きなハルには、やっぱりピンと来ねーみたいだけど。
現実問題、勃たねーらしい。
「ようはヤル気の問題じゃね? 絶世の美女とやらでも、俺の気が萎えてりゃ勃たねーもん。ちょーヤりてーって時に誰かいたら、俺はそいつとセックスできるね」
「あー……なんかわかる。っても俺はちょーヤりてーって時に男選んだことねえから、実際イケるか正味わかんねーわ。試してみっかなあ」
「誰か慣れてるやつ見繕ってやろーか?」
「えー、咲は体関係多すぎな。ショーゴくんゲイじゃないの? かわいい系ならいけっかなあ」
「んーショーゴはセックス下手くそだぜ。腐れマゾの変態だけどビッチじゃねえもん。一般的な意味ではかわいくないともーよ。デカいし筋肉あるから厚みあるし、なんかキラッとした真面目系のイケメン。呼び出す?」
「や、いいわ。ガチ男すぎ。初心者向けの手慣れた子いない? お兄さん」
「俺風俗の斡旋係じゃねえンだけどー」
ちっとも本気じゃないくせに、俺がそういうとハルは面白そうに笑っている。
興味あるならとりあえずやってみればわかると思うんだけどなあ。俺はなんでも気になったらやってみるタイプだし。
それでもちゃんと頭ん中で知り合いを思い浮かべて見繕ってやる俺は、なんて友達思いなのだろうか。自画自賛しちゃう。
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