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14(side春木)※微

 高校入学が決まると同時に、父親の異常性癖を見て見ぬふりをしていた母親が、腫れ物のように避けていた咲に見栄えだけ上等なマンションを買い与えた。  暗に家を出ていけと示している。  誰も咲を引き止めない。  だから追い出されたと同時に、咲はかわいい息子の演技をすっかりやめて、愛情への信頼を枯らしたのだ。  生まれた時から異常な愛だけを注がれて育ち、その愛が体の成長と共に消え去った。  家族からの親愛ですら貰ったことがない。愛情はすべからく〝笑えない冗談〟とインプットされた。  ゴミのように捨てられて、自分の価値に見切りをつけ、最悪なことに、それを納得して受け入れた歪な男。  たぶんきっと、悲劇なのだろう。  この出来事は。  だけど咲が一人暮らしの理由をあっけらかんと俺に話した時、俺は内心諸手を上げて、盛大に喜んだのだ。  これで咲の一番親しい人は、俺だけだ。  俺は唯一、咲の全てを理解できるから。  咲の父親は愚かだと思う。  あんなに咲に愛されていたのに、あっさりこの手を離してしまうなんて。  その愛が喉から手が出るほど欲しい、一途で盲目的な恋をする人間がどれほどいるか、あの愚かな男は知らないのだ。 「おとうさん。なんでいんの?」 「んー? 咲を抱きしめるためだぜ」 「はっ、趣味悪いね。……ん……」 「咲、あのな……本当は俺の初めてなんか、お前に貰ってほしくてたまんねぇよ……」 「? くすぐってぇな?」  俺が子どものように咲をぎゅっと抱きしめて熱を持った滑らかな首筋に顔を埋めると、咲は髪が擦れてくすぐったそうに笑ったが、機嫌よくゆるゆると口元を緩めた。  シラフだったら、俺がこんなことしたら頭がおかしくなったんじゃねぇかって、思われるだろう。  そのぐらい、おかしい。  俺はただの友人だから。  でも今この時間だけ。  今だけは、俺の咲。 「ん、う……咲、咲……っ」 「おとうさんは、ワガママだなぁ。おれ、ねむいぜ。ほんとうに」  咲の膝に乗って、すりすりと体を擦りつけながら咲の体温を求める。 「さき、キスして?」 「ん」 「っふ」  咲の唇は、オレンジの味がした。  カシオレだ。  父親だと思われている俺の言うとおりに、あの頃へトリップした咲はキスをして、舌を絡ませ、甘やかしてくれる。  あぁ、憎いよ。憎い。  咲の親父、俺はお前が憎い。  咲は俺をおとうさんだと思いこんで酩酊しているから、こんなに甘い口づけを俺に贈ってくれる。  ハルなら、貰えないもの。  これは俺のためのものではないのだ。 「はっ、ぁ……さき……ン……」  唾液をすすり、唇から、首筋。  そこから覗く胸元にぺろぺろと丁寧に舌を這わせる。  固くなってきた陰茎を咲の腹筋にずりずり擦りつけて、右手をベルトの隙間から突っ込み、手淫に耽った。  すぐにクチャクチャ肉が粘つく。  酔った親友を目の前にオ‪✕‬ニーする背徳的な悦楽も、アルコールの記憶に溶かして消えていく。  とろんとした瞳で俺を見る咲は、「んー?」とよくわかっていないような声を出して身をよじるが、それすら俺には心地いい。

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