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05
なんで俺の体の使い道に、文句言ってんの? やーねぇー最近の若い子はワガママで。俺もか。はっはっは。
タツキはノリが良くて聞き分けのいいできたフレンドだったんだけど。
俺が他人にそういう対象として見られようが、触れられようが、タツキは文句を言えないはずなのだ。
「タツキィ」
「ィ゛ッ……!」
ルール違反者であるタツキの右耳についたシルバーピアスをぎゅっと引っ張って、紫メッシュの髪の房をサラサラと指で触る。
「めんどくせーから、そゆこと言うな? ところ構わず男誘ってる変態はお前も一緒だろーが。俺ちゃん悪い子は嫌いだぜい」
ニコニコ笑ってそう言うと、タツキはひきつった笑顔で震えて、ピアスごと耳を持っていきそうな俺の手に自分の手を添えながら、今にも殺されそうな家畜みたいな目でオドオドと俺を伺った。
タツキだって、節操がない。
暇つぶしにナンパして4Pしたことあんじゃん。俺のセフレとも何度か混ぜてるし、タツキの穴はわりかし経験豊富だ。
なのに俺は禁止だなんて、不思議。
怒っているわけじゃない。
理解できないことが多いとめんどくさくなるから、手っ取り早く黙らせたくなるだけ。
「ぉ、怒ったのか、咲ィ……?」
「んーん? めんどくさくなった。俺年中反抗期の中学生だから、あんまつまんねーこと言っちゃやーね? あはは」
「う、ぅうん……」
馬鹿なタツキは俺の言葉にしおしおと萎びて、コクコクと必死に頷いたから、手を離してやった。
聞き分けのいいのは好きだぜ、たぶん。
「痛ぇ?」
「ん……、全然ヘーキィ」
タツキが萎れたのは一瞬だけだ。
痛めつけた耳をなでてやるとすぐにニンマリニンマリと笑みを浮かべて、また抱きついてくる。いつものこと。
俺の首に腕を回して甘えてくるタツキ。
俺よりも頭半分大きくてネコ科の肉食獣のようにしなやかな筋肉のついた硬い身体が、蔦のように絡みついてきた。
懲りないなぁ、コイツ。
俺はいつだって「嫌になったら好きにやめな。地雷踏まない限り遊んであげる」と言って好き勝手に振舞っている。
それでも一緒じゃなきゃヤダってんなら、マジで、救いようのねぇ駄猫だわ。
「咲ィ、咲ィ」
「わは、にゃんこみてー。ってかオマエ、ライブの打ち上げ行かねぇの?」
「は、あんなん面白くねェもん。ンなの行くより咲とがイイ」
俺の首筋に埋まった顔からボソボソと吐き出されるドライな言葉。
タツキ信者のSPACEメンバーが聞いたら泣くかもね、それ。ウケるわ。
SPACE。
空関連の名前で集まっているあの男たちは、ヴォーカルの月、タツキに心酔し、それはもう宗教的に惚れ込んでいる。
経緯はまちまち。中学からのやつもいれば高校からのやつもいるし、そのあとのやつもいる。
なんにせよやつらはみんなクソ音楽バカで、SPACEはタツキを筆頭に天才揃いだと専らの噂。
詳しくは知らない。ってか覚えてない。
タツキが何回も紹介してくれたしライブで何回も聞いて見てるはずだけど興味ない。
やつらはみんな俺のことが嫌いらしいが、俺は別にどうでもよかった。
いつも殺されそうな目で見てくる。それは面白い。殺されたら殺すね。
夢で会おうぜ? トップスター共。
「ふぅん? じゃー、俺といると面白いタツキは、俺を楽しませてくれよ」
「ン、ん?」
あはは、と笑う。
不思議そうに首を傾げて、タツキが顔を上げた。
ううん? わかんないカンジ?
とはいえ、なんでもいい。
楽しければなんでもいい。なにかねえ。
「なんか、面白いことしてぇなー」
「面白いことォ? 今日はセックスしねェの?」
気分でなにか考えようと呟くと、タツキは俺の体をなでてキョトンと尋ねた。
あぁ、そいやそうだな。
タツキはセフレだから、そりゃあタツキと会ったら大体セックスをする。
あんまりにもつまんねぇから、忘れてたわ。
んじゃあれね。
ニマ、といつも通りの笑みを浮かべながらタツキをトン、と薄汚れたコンクリートの壁に追い詰めてやる。
ピアスだらけでカラフルファッションのヤバめな美形がポカンと唇を開いて見つめる、子どもみたいな幼い表情。
それが似合っちゃう男だ。こいつは。
「んー、じゃ、フィストファックしね? ケツ壊してみよーぜー」
「っ!? え、や、ア……ウゥ……」
それも俺の言葉で崩壊したけど。
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