122 / 306

14(side翔瑚)※

(咲……これは咲だ……俺は、咲を抱いている……咲の中に、俺が……) 「ん……ぅ、っ……」 「ぁッ…もっと全部、ッあ…ぁぁ……ッ」  繰り返し俺の屹立を意図的に粘っこく締めつけながら、蛇月は「咲……」と切なげに恋焦がれる名を呼んだ。  強く野性味のある派手で退廃的な美形が、見る影もない幼い表情を恍惚と上気させて抱かれるセックスに酔いしれる。  そういう男がガチガチに興奮した性器を揺らして乱れているのだから、そのスジの人にはたまらない光景かもしれない。  自ら跨って、上下に弾んで。  抑えることなく淫らに喘ぐ。  蛇月は目をつぶって、俺を咲の亡霊、妄想の道具として扱っていた。 「……っぁ…ふ……」  ビクン、と挿れたモノが脈打つ。  思わず高く呻くと、俺の体で夢に浸っていた蛇月が薄らと目を開く。  目が合った。  ジワリと顔に集まる熱。 「……ん……ハッ、翔瑚……お前サ……」 「ぁ……く、っ……」  自分が感じている感覚が気恥ずかしくて誤魔化すように指先を噛み視線をずらすと、蛇月は恍惚とした表情のままニンマリと口元を緩め、図星を刺し貫く。 「ナカ疼いてンだろォ……? 羨ましそうな、カオしてる……うひひ」 「……ッ、……ん……」  ギクッと心臓が跳ねた。  知らんぷりをして明後日の方向を向く。下腹部の奥がジュクジュクに膿んでいるわけない。  すると蛇月は俺の腹筋に手を当てて腰を浮かせ、ズル、と引き抜く寸前まで退くと、俺の一物を使って見せつけるように激しく腰を振りよがり始めた。 「アッ咲……っゥ、あっ…はっ、咲ィ……っア〜…ッ咲の気持ちィゼ……っ」 「っこら蛇月、わざとそんなっ……意地が悪い、ぞ……っく、っ……」 「はぁ…っあぁ……っ動いて…っオレ、ァん……はッ、咲にずっと抱かれてェのォ……っ」 「ん、ん……っ、いやだ……っ俺も…ぁ、蛇月……っかわって……っ」 「イヤだ……ッあとでゴハン、食べるくせにィ……妄想で、オ‪✕‬ニーぐら、ぁ……っく、好きに、させろ……ッ」  唸るように喘ぎながらわざとらしく中を犯されて悦に入る姿を見せられて、俺はシーツを引っ掻き首を振る。  汗ばんだ肌が確かな熱を帯びる。  疼いて、もどかしくて、喘ぎたくて、乱れたくて、こんなに気持ちよくても、あと一歩が狂おしいほど物足りない。 「ひ、あっ……ぅ、翔瑚のオス失格なコレは、オレの咲だゼ……っ」 「っふ、俺も、抱かれたぃ……っ」  ──だって、仕方ないじゃないか……!  咲を想像しろと言ったのは蛇月だ。  咲を思い出しながら蛇月の感じる姿を見て突き上げる襞の感触を自分の体で反芻させられると、欲しくなるに決まってる。  咲に抱かれる白昼夢が過ぎったなら、俺のカラダはもう我慢できない。  もし咲が俺に抱かれていたら?  こんな顔で火照って鳴いて、こんなふうに俺の名前を呼んで俺に跨っていたら?  ちゃんと咲を抱く想像をして確かに興奮していたくせに、俺は想像上の咲にすら、引き倒されて犯されたくてたまらないのだ。 「ぁ、ダメだ、代わって……っジンジン、してる、俺……っ」 「やぁ、あっ……ふ、咲のベッドで、抱かれるの、っ……俺が、んぁ、っ」  代わって代わってと腕をもがかせる俺に、嫌だ嫌だと駄々をこねる蛇月。  ズルい。羨ましい。俺だってもう抱かれることに身体が慣れてしまって、自分で触るだけじゃ満足できない。  そりゃあ、蛇月の中は文句なしに気持ちいい。  腸液と先走りが混ざって滑りが良くなったせいで、絶妙にうねる肉穴が屹立をギュウギュウと扱きあげて絞る。  でもそれじゃ生殺しだ。  イクはイケるとしても、なんかもうそういう身体じゃなくなった。

ともだちにシェアしよう!