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「で? 結局どっちなら俺とメシ食ってくれて、どっちなら俺と遊んでくれんの?」
「食事は俺がこれから作る……」
「遊びはオレが明日一日空けるゼ……」
駄犬が一匹。駄猫が一匹。
床で正座しながら、寝室のドアにもたれかかっている俺を上目遣いで伺いつつ肩を丸めてしょぼくれている。
放置プレイってやつをしてみようと思ったんだけど、まさか二匹同時にやるとドMとドMが俺のベッドでどっちが挿れるかキャットファイトを繰り広げながらセックスし始めるとは思わなかったわ。あはは。おもしろ。
クククッ、と喉を鳴らす。
二人はビクッと身体を跳ねさせ、乱れた服装のまま、バツが悪そうに重ねて謝ってきた。別に謝んなくてもいいって。
「んー? 他人のベッドで見られてるのも気づかないほど夢中でヤッてた腐れビッチの言うことは信用ならねぇよなー。あったじゃん? ゴハンの時間も、アソブ時間も」
待機中に溜まった返事待ちの片付けをしていた指を止めず、フンフンと笑う。
謝られることは特にない。
笑っているだけで謝られることは、不思議な現象だ。
強いて言うなら、食事も遊びも、今は気分じゃないってことかね。
「俺は待ってて って言った。お前らはわかった って言った。んで、俺は言われてないけど待った。ただお前らのわかったは、気分じゃねぇんだよ。もう要らねー」
俺腹減ってねーもん今日いいや。
だって待ってる間にメシ食ったし。
なんかそのへんにおいてあったロースハムワンパック四枚入り。買ったっけ? そもそも冷蔵してねぇけどまぁいっか。
遊びもハルと遊んだばっかだしいいや。
ハルは俺が遊ぼって言ったら絶対に気が変わる前に遊んでくれるステキな親友だかんね。無理でも絶対連絡してくる。
誰かさんたちのように、向いた気が失せるまで放置はしないのだ。
スマホで落ち物ゲーをやりながら片手間にそう説明する。
あららぁ、青ざめちゃってまあ。
怯えることも悲しむこともねーのよ?
そもそも機嫌取りなんかしなくていいし、俺の都合とオマエラの都合が違うならそうでいい。
待たせたことも、俺の家で俺のベッド使って勝手にセックスしてたことも、俺は心底どうでもいいんだよ。
気が変わった。
それが一番問題だろ。
「あ、てかそんなんよりセックス好きなんだっけ? それじゃあしゃーない。いいよねーセックス。眠気くるし気持ちいいし愉快だし暇も潰れる。最高だよなーわかるよー他人の家の他人のベッドで家主抜きのセックス楽しいなーあはは」
「いや、ち、違う、そんな……っ」
「オレらそんな、違ェよ咲……っ」
「違くねぇでしょイイじゃん別に。俺は適当にキョースケでも呼んでヤるからお前らはお前らでラウンドツーでもヤれよ。ヤれんだろ? ヤるよな」
「な……っ、す、すまない咲、俺が悪かった……!」
「さ、咲ィオレもうシねーから、許して……っさき……!」
「怒ってねぇよ? おもしれーよ?」
楽しいよー愉快だねーって顔で笑ってる、つもりなのに、やっぱりバカだからショーゴもタツキもうまく俺を理解できないみたい。
話が通じないとめんどくさい。
普通に説明して提案しているのに、なぜ通じないのやら。
アレ? ドMならこれも嬉しいんだっけか。俺全然なんだけど。
あの診断テキトーじゃね。
俺やっぱノーマルじゃん。嘘吐き。
論文のように長文を送り付けてテンプレを踏襲しただけの罵倒をしてくれたみかちゃんを、脳内で詰る。
どこかでハルが「だから最初に言っただろーが」とむくれている気がした。
だって暇なんだもん。
いいじゃん。無駄なことして根拠のない戯言と戯れたって。過程が大事だろ。
生きるっていう暇つぶしがさ。
飽きっぽい俺には苦行でしかないんだから、道道で草食って面白おかしくしないとやってらんなくね?
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