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 目の前の馬鹿共をにこり、と微笑みを浮かべて見つめる。 「咲……っ」 「咲ィ……っ」  すると犬と猫は頬をほのかに赤く染め、ワンニャーと期待に鳴いた。  俺がこいつらを酷く扱うのは、こいつらが本当は俺にとんでもなく甘ったるく優しくしてほしいって思っているから、かもしれない。たぶん? 今考えたケド。  もう嫌だ、もう勘弁してくれ、もう解放してくれ! って。  どのぐらい壊せば言い出すかね、って実験中。  タツキは手遅れすぎて。  笑えるぐらいに破片になっても、まだ頑張っている。 「タツキ」  甘く名前を舌で転がすと、タツキは暴虐の怯えと赦しの期待に震えた。  澄んだ瞳が一心に俺を見つめて、それはブレることがなく鮮明に俺を映す。  イイコだね、タツキ。  破片になってもイイコだよ。  そう言えばショーゴはこの間、少しだけ狂っていた。いつ? なんで? かは知らねーけど。興味ねぇし。  突然旅行に行きたくなって、その時一番早かった電車に乗って温泉に行ったんだけど、帰るのがめんどうで少し疲れていたからアヤヒサに迎えを要求して代わりに足でイカせてやった。  そんな話をすると、いつものショーゴは、そうか、と言って温泉の話あたりを無理矢理引っ張ろうとしてくる。  だけどその時は、そうか、と言ったあと、蚊の鳴くような声で「俺を一番に呼んでほしかった」と言った。  理由は不明だ。  俺は「その時の俺に言ってさ」と流した。どうでもいいかんね。  アレかなー……熱で朦朧としてた時に、ショーゴが訪ねてきたっぽいんだけど、なんか身のない話をして……起きたらなーんか隣にいて、取り敢えず叩き起こした日……アレ、なんかあったっけか。  ま、狂おうがまともだろうが、俺の前でくんくんと鳴いている駄犬には自覚がないので詮無いことだろう。 「ショーゴ」  柔らかい舌触りで名を呼ぶと、ショーゴは俺の笑みから本心をすくい取ろうと薄く唇を開いて見つめてくる。  バカなショーゴ。  やめられないとまらない、なんて人形遊びでやっちゃダメよ?  二対の瞳が全身で俺の声にアンテナを張る姿を見下ろし、気持ち悪いと舌を出す。 「なぁ、俺とゲームしちゃおっか」 「ゲーム……?」 「ゃ、やる、やるゼ、なんでもオレ……っ、ゥ、ゥン……」  ぽかんと口を開けてオウム返しをするショーゴと違って、タツキは内容を聞くより先にイエスを返してきた。  できたフレンドちゃん。  そうそう。コレが手っ取り早くて俺ちゃん好みの鳴き声。  えらーいえらーい、と子どものようにタツキの頭をなでてやると、タツキはバカみたいに間抜けな顔でへらりと嬉しげに花を咲かせた。  ショーゴは眉を下げ、同じくコクリと頷く。おっかなびっくりだが手を引く気はないらしい。

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