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「ええぇ〜っ! 突然うまくなりすぎじゃね!? 俺が無双する予定だったのにないわ〜。サゲリシャス〜」
「ゼロ点の俺にンなこと言われてもなぁ……あの人らが鬼つよなんよ。百三十五点ってかなりうまいじゃん」
「やだドンケツ咲くんもっと褒めて!」
きゃっきゃと絡みつくニーを適当に相手して流す。
サトウさんが同率一位に決まり、アヤヒサは無表情で黙り込んだ。チキンだわ。
これが困るからわざわざど真ん中三投のブラックじゃなくてクソ難しい百八十点狙ったのに、サトウさんだって割とエグいよ。
そんなに俺にオネダリしたいのかね。
「仕方ねぇなぁ……んじゃまずクロさん? は、なにしてほしーの?」
黙ってしまったアヤヒサに首を傾げて、ん? と尋ねる。
いーよーいーよーなんでもすんよー? たぶん。
文句も言わずに指示を待つ俺を見て、アヤヒサはスッと目を細めると、ほんの少しできた眉間のシワをほぐすように指でグリグリ。
「そうだな。ここは余興らしくおもしろおかしい話のタネで、秘密にしている悪いことの一つでも暴露してもらうとしよう」
「わーおいけず。中学生かよ」
「いいねぇ〜? 俺そういうの気になる。好奇心旺盛なんで」
ケラケラと笑うナカムラさんにガヤをいれられて、敗者の俺は呆れる。
この世でトップクラスにどーでもいいこと聞いてくんね、お前。
お茶を濁すにもなんかあるでしょ。選択肢ミスりすぎ。
「……咲、最下位以外だ」
ガヤにまぎれた喧騒の中、ぽそりと小さな声がささめいた。
ふーん、なるほど。
こっちが本当のお願い、ね。
それじゃあ余興はさっさと終わらせよっか。くだらねーし。
早く言えよぉーとニヤニヤとほくそ笑むニーが急かす。
それに便乗してナカムラさんがそーだそーだと囃し立てた。
「俺は清廉潔白だから悪い秘密なんてないんだけどー。なに言えばいーの?」
「そんなやついねー! あはははは!」
「ひでー。ここにいるのに」
不貞腐れたフリをして唇を尖らせ、そっぽを向く。
「そうだなぁ。とりあえず一番人様に言いにくいことでいんじゃね? ダメだったらやり直しで聞き出すし!」
「お題難しいなー……じゃ、ね。借金の代わりに飼ってた人間がいたんだけど、いろいろあって他人に売って、海の向こうに直送したんだよね。今なにしてんだろ。興味ねーや」
「そマ ? え〜咲くんチョ〜悪メンじゃん尊敬する〜。悪事レベチじゃね? 俺も女飼ってっけど売り方教えてほしいっすわぁ」
「お断り~。ま、これでいいだろ」
「あぁ、構わないよ」
じゃれつくニーを相手取りながら確認すると、アヤヒサは頷いたのでよしとした。
うふふ。秘密でも悪でもなんでもないし、アヤヒサならそのいつぞやの男の行方すら知っているだろうに。
キョースケの項に悪趣味なカスタムを施した解釈違いの同族なんか。
「じゃあ次、サトウさん。咲くんになに頼んじゃう〜?」
さて次へ、とトントン拍子にチャプターが進んでいく。
みんな好奇心旺盛だな。愉快なことに飢えてんだろね。
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