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07※
耳腔の中を反響する、クチュ、ヌチュ、と粘着質な水音。膝立ちになるももがピクピクと震える。
「あぁ……クソ、はぁ…ン……」
ブルッ、と身震いした。
咲野ならば耳の付け根を噛むが、歯型をつけるとあとでバレてしまう。
理久を傷つけたと思われたら、愛しの春木と言えど報復されそうだ。
本能では噛みつきたい。
咲野が愛する男の耳を、噛みちぎって自分の一部にしたい。
だってきっと咲野はこの耳も噛んだのだろう? あぁ、興奮する。過去の歯型の残影ごと腹の中に収めてやりたい。
もどかしい、快感。
理久は上手い。けれど、愛撫しあっているだけで満足は、できない。
「はっ…っん……」
チュルン、と舌が耳腔から抜けて、濡れた耳元に赤い唇が触れる。
「ふ……欲しがりだな、野山……奉仕精神に欠けたキミじゃあ、やはり男をリードして満足させることなど、できそうにないかね……?」
「あっ……? ん、な、ら」
「お、と、……っく」
クス、と失笑とともに囁かれた春木は、素早く腕の力を抜きながら体を半身かわし、ほとんど同じ体格の男をベッドへ押し倒した。
スプリングがギシッ、と軋む。
予想外の空白に、理久の体はうつ伏せになって倒れ込む。
そして体勢を立て直されるより早く、色白ながら引き締まった大人の腰を掴み、自分の膝で理久の脚を開かせた。
この間、十秒もかかっていない。
こちらを舐めきっている相手なら、組み伏せるなんて簡単すぎる。
理久が肩越しに首を振り向かせ忌々しげにジロリと睨むが、春木は嫉妬と独占欲を纏った凶悪な視線で返す。
春木が理久を真似てしっかりと感じさせながら解した秘部は、呼吸とともに収縮を繰り返していた。
そこへローションを追加し、かけたローションを勃起したモノでヌル、ヌル、となぞる。
「はっ、そろそろ実践本番だろ……? 不出来な生徒にしっかり教えてくれよ、アヤヒサセンセー」
「はぁ……っ……敵意しか、向けてこない。昔からだ、貴様は……ん……」
「そりゃお互い様。それに俺、欲張りだもんでね。咲の穴兄弟に、なってやりてぇって思ってたワケ、よ」
「性悪、が……」
話しながら、柔らかい入り口へ、先端をグプ、と潜り込ませた。
「ん……はっ……」
ブルリと身震いする理久のしなやかな身体が仰け反り、春木の動きに合わせて、尻が身じろぐ。微かな嬌声が、期待を帯びる。
小さな口は驚くほど柔軟に拡がり、指で感じていた動きよりリアルな襞のうねりを感じた。
「っ……ふ……ムカつく、野郎……」
──……熱い、中。溶けそうだ。
拡げたとはいえ狭い直腸へ押し込むことに、ストレスもない。
声も、筋肉のしなりも、全身で喜悦を感じているとわかる。
少し挿れただけでピタリと吸いつき、鍛え上げているもののデスクワークで白いままの熟れた男の背は、汗を浮かばせてじっくりと受け入れる。
息の吐き方が上手いのだろうか。
それとも感度がイイ? 力の調節? 観察するが、集中できない程度には男の中が、理久の中が気持ちいい。
「ん、もう、違う……っ」
「ってめ、勝手すんなよ……!」
認めたくなくてヌルヌルと浅い箇所だけを出入りしていると、貫かれる身体が捩り、ズプンッ! と自ら春木の怒張を迎えた。
「おいコラ、テメェ……っ」
「遅い、焦らした、つもりか……? 咲はもっと、乱暴に突く、っふ」
「押しつけてくんなやっ……!」
グンッ、とグラインドした尻が強引に根元まで深く呑み込む。
春木の恥骨にペタリと尻肉が触れるが、焦れた理久は止まることなく、そのままぐぷぐぷと抜き差しを始めた。
「あっ…んっ…咲、気持ちいいかい? 今日の気分はどうかな……? 希望があればその通りに、んっ…はっ、んっ…あっ…あっ…」
「はっ……っ俺に教えんのが仕事だろうが……っ咲恋しいばっか優先しやがって、俺の勝手に、使うな……っふ」
「妄想の副作用、さ……一週間は、些か長かったものでね……っ」
まるで肉のケダモノに食いつかれたみたいだ。色狂いらしい。
勝手に主導権を握られ、春木は歯噛みする。
沸騰した腹立たしさをバネに探りを入れながら強く腰を打ちつけるが、探らずとも理久は自分で中を収縮させ、感じる箇所に春木のモノをこそがせるのだ。
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