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08※
「あぁ、クソ、結局自分だけ、っん、得しやがんのかよ……ッ」
「ひッぃ、ぁッ…! いい……っ」
「っせぇな、はっ」
体を上下に揺するだけじゃない。
腰をくねらせ、微かに円を描く。そうされると、絞られる。
思わずシャツの中に手を滑らせ、ガリッ、と理久の背に盛大に爪を立てて引っ掻き、生白い肉を抉った。
それすら甘いとばかりに、理久は淫らに傷ついた肢体を魅せつけて〝もっと強く傷つけて〟と強請りながら、血の垂れる背中をのけ反らせる。
その態度が、腹立たしい。
それら全てが、憎たらしい。
今まさに春木がその熱く柔らかい粘膜を雄の怒張で抉っているというのに、まるで妄想の中から帰ってこようともせず、春木を咲野に見立て喘ぐ。
いっそ皮膚を剥がしてやろうかと春木が逡巡した一瞬。
理久は半身をひねって片足を上げ、春木の腰にその片足を巻きつけた。
そして乱れた自分の前髪をかきあげ、滅多に変化しない氷製の鉄仮面で、ユルユルと笑みを作る。
余裕綽々、大人のオトコ。
信じ、頼られる、年上のオトコ。
「ほら、咲、好きなようにシて、いい。私はあなたのシたいことを、全部、されても、応えられるカラダなのだよ」
──限界だ。
春木を咲野に見立てて悦楽に溺れる理久は、春木の圧倒的な独占欲と絶対的な〝親友として培った咲野の一番の理解者〟という自負心、愛の地雷を、無神経に、盛大に、ブチ抜いた。
「あぁ、そう」
「ッぃ、ぐッ……!」
パンッ! と肌がぶつかる破裂音とともに理久がビクンと身を弾ませた。
先端のみを残して引いた怒張を、根元まで一息に突き刺したからだ。
さっきまで比較的押され気味だった春木が受け身の都合も無視していきなり躊躇なくエグったものだから、なにかおかしいと気づいた理久が振り向きかける。
「ま、待て野っ」
「そう言って咲が待ってくれたか? ん? はは。──ねぇだろ」
「ッヒ、ぁッ…ぁ゛あッ!」
しかしニヤリと凶悪に笑った春木は、間髪入れずにバチュッ! と骨ごと砕く殺意を込めて一突きし、そのまま猛然と柔い胎内を犯し始めた。
それと同時に足の間で蜜を零す理久の肉棒を乱暴に掴み、ヌヂュヌヂュと皮が破れそうなほど強く扱き上げる。
「はッ? お前にッ? できることがッ? 俺にッ? できないッ?」
「のや、ッあ…!」
「んなわけ、ん、ねぇだろッ! 俺が全部受け入れるんだよッ、俺の担当だッ、応えんのは俺だッ、いつも俺だッ! この俺だッ! 他は要らねぇッ!」
「ッぉ、聞きなさ、ッ待ぁ……ッうッあ゛ッ、あッ…!」
「ああああ咲、咲咲咲咲ィッ、俺がお前のことで受け入れらんねぇことがこの世に一ミクロンでもあるわけねぇんだからぁっなぁ、咲、咲ちゃぁんッ? 咲野ァッ! お前は俺のモンだッ!」
「んッ! ンッ…ンッ、ンッ!」
「あはっ、ほぉらぁ独り占めはルール違反だぜ? 殺してやるよ」
「ん゛〜〜〜〜……ッ!」
摩擦で腫れあがりそうな直腸の襞を前立腺を押しつぶしながらこそがれ、握り潰さん勢いで敏感な性器を扱かれれば、流石の理久も脂汗をかいて必死に春木を止めようと口を開いた。
しかしその言葉すら悲鳴に代わり、上がる嬌声をせめて押し殺そうと、両腕で顔を隠して矜持を守る。
それでも春木は容赦しない。
ベッドの上を哀れにもがき腰を丸める理久を強引に捕まえ、防御しようとする体を無理矢理開かせて犯す。
「死ねよ、ほら死ねッ」
「はッ、少し落ち着け、バカ、ぁッ、ぐ、ぁッ…! はぁ…あ…ッ!」
「あぁでも死んだら咲が泣くのかよ、ムカつくなぁもうじゃあイキ狂ってバカになれよ、ほらぁッ」
春木は覆いかぶさるように閉じ込め、引き寄せ、押さえ込み、捕食する。
理久の片足を上げ、本人の肩につきそうなほど力強く押し倒す。
関節が悲鳴をあげて痙攣する襞が不規則にうねろうが関係ない。
ルール違反はお仕置きだろう?
「あっ…ぁあ…っぁぁぁ……っ」
バチュッ! バチュッ! と耳のおかしくなりそうな音をたててローションが摩擦され、汗や淫液の混合液と化す。
結合部からネバネバと幾重にも糸を引いて溢れるあぶく。
凹凸を噛み合せるような体勢だ。根元まで余すところなくハメられる。
何度も何度も何度も出入りする。
何度も何度も何度も擦り上げる。
腹筋を突き破ってやる気で抉る。腹の中から食い散らかしてやりたい。
アナルの縁が充血してめくれるが関係ない。裏返って死んじまえ。
咲野を満足させる肉が大嫌いだ。
たかが内臓。居心地よく包みやがって、こそげ落としてへばりつけて自分のものにしてやろうとすら思う。
自分の手の中でビクビクと脈動する肉茎からどぷっ、どぷ、と押し出されるように精液が漏れ出る。
そんなの関係ない。
裏筋からカリ首の裏まで、握りながら扱くことをやめてやらない。
イキ殺すのだから出すものがなくなっても延々と絞ってやるのだ。
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