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09※
「ぁぁ……っぅ…あ……ぁ…ひ…っ」
「チッ、クショウっはっこんだけヤっても動き合わせてくんなよ気色悪ィッ」
「っは、癖だ、わかったらもう…ぅ、っあ…あっいい加減に、っんぁっ」
「はぁッ? あぁもうクソだ、最低だ、完璧なやつなんか殺してぇッ、ザー✕ンくせぇビッチ穴、便所ブラシ突き刺して掃除してやる……ッ」
赤い髪から汗が散り、理久の肌に落ちては混ざり合ってベッドが濡れた。
咲野にどんな傷をつけられても毎度綺麗に治していたおかげで傷一つなかった理久の皮膚を、春木は爪をたてて歯を食い込ませ、傷痕と血でケダモノのように汚していく。
それが本性なのだ。
春木はケダモノ。咲野にしか飼いならせない、凶暴なケダモノだ。
「咲、欲張りな卑しい色情魔にはッ、あッ……罰を与えて、しかるべきだぜ、なぁ……ッ!」
──ピロロン。
「!」
そうして春木が暴走しかけた時。
ベッドの上に投げていた春木のスマホが、着信を告げる音楽を奏でた。
瞬間、春木の全神経はその着信を取ることに費やされる。
反射的に理久の口元を押さえつけて手を伸ばしたのものだから、くぐもった「ふ、ぐッ」という呻吟が聞こえるが無視だ。どうでもいい。
こんなタイミングで電話をかけてくるなんて、流石は愛しのキティ。
ナイスタイミングすぎる。
愉快を好む恋人が喜ぶエンターテインメントが起こる予感しかない。
『──ランチが盛況すぎて材料なくなったらしくてさ。明日の準備に影響するとかで早じまいしたから、早上がり。予定時間より三時間も早いし別になんてことねーんだけど……こういう報告って、コイビトには必要なんだろ?』
緑色の通話ボタンを押して耳にあてると、待ちわびた恋人──咲野の声が電波を通じて春木の鼓膜を震わせた。
強烈な痛みと快楽の最中で春木に口元を塞がれて脱力する理久を見下ろすと、裸眼の甘い双眸が、咲野の気配だけで揺らぎ、温度を増す。
「……へぇ、そりゃ最高にご機嫌だな」
『あはは。早く帰ったとこでハルに会えねんなら意味ねーわ。月曜日、ネトフリ見ながら酒盛りするルートでしょ』
無意識に口角が吊り上がった。
通話の向こう側で廊下を歩くコツコツという足音が聞こえるからだ。
声を聞かせる気なんて、さらさらない。
だって、つまり、もうすぐ咲野がここへ帰ってくる。
春木がここで咲野の帰りを待っていることなんて、知らずに。
「ン……」
楽しい計画を思いついて腰を揺らすと、ぐちと中が擦れて、春木の手のひらに鼻にかかった吐息が漏れた。咲野には聞こえない。
けれど察しのいい咲野は春木の声を一言聞いただけで、なにかしらの気配を察知する。
『んー……ハルもゴキゲンだねぇ』
「おーゴキゲンだぜ? だから早く帰ってきて寝室こいよ、咲ちゃん」
『ソレ、駐車場にアヤヒサの車が止まってることと関係あんの? あ、玄関に靴ある。関係あんね。うふふ……イジメッコのハルちゃん』
「イジメ? はっ、優しく頼み事してやったのに咲の余韻で勝手にぶっ飛んだのはコイツだっつーの。だからイジメじゃなくて、ただのヴァージンとビッチが戦争中ってだーけ」
そう言い切った瞬間。
ガチャ、と寝室のドアが開く。
「──ホントだ。戦争中だね」
トン、とスマホの画面を突いて通話を切りながら部屋に入ってきた咲野は、ベッドの上で交わる春木と理久を見つめ、薄らと笑った。
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