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◇ ◇ ◇
家主の俺が帰宅後、まず初めに見た光景は、カワイイ恋人二人がなぜか自分のベッドでくんずほぐれつの戦争を繰り広げていたらしい現場だった。
それは別にいいんだよ。
なんぞやりたいならなんでもどこでも好きにやればいい。ガマンは健康によくねーし。ヘルスケア的な。
けれど、見過ごすにはいささか気になる点が双方にあった。
とはいえそれを一つ一つ指摘する時間、二人のかたっぽを放置するというのは、平等じゃない気がする。
それに、戦争というと喧嘩だ。
喧嘩をすると歴代の恋人もどきのように、二人ともが去ってしまうかもしれない。それはいただけない。
どちらも等しく愛しているからこそ、俺はしっかり考えて、とりあえず、一人ずつ満足させてやりながらまずこの戦争を和平で終わらせることにした。
すなわち──
「は、ン……ッ…フッ……」
「なぁアヤヒサ、ハルを最初に虐めたのはお前だって? それ、ダメだよなぁ。良い悪い正解不正解じゃなくて、ダメなんだよ。わかる?」
「ふぁふぃ……ゴホ、ッン…ゥ」
──疑問の解消と和平交渉を同時にクリアしてあげよう、ってこと。
手足を体の裏側で拘束され自分では這うこともままならない状態のアヤヒサの口に深々と肉棒を出入りさせながら、俺はいつもの薄めスマイルで言い聞かせる。
「自分が納得して来たんだろ。じゃあちゃんとレッスンしねーと。文句垂れて、雑に教えて、自分の意思決定の責任ぐらいとってちょーだい」
「ン゛ンッ……ッ」
ゴリュ、と食道を抉る。
逃げようにもまともに首を動かせず、前髪をわしづかみにされて無遠慮に口腔を犯され、むせるアヤヒサ。
マヌケな顔で唾液まみれ。
見ているだけで笑えた。
クシャクシャに乱れた髪と体液でヌメッた肌が惨めったらしい。
芋虫みたいなスタイルで、歯をたてないよう必死に口を開けている。
そして分泌される粘液を端から飲み干して窒息しないように気をつけながら喉の奥に入り込んだ肉茎を食道の動きで絞り、ギュ、ギュ、と扱く。
もちろん、イジメてなんかない。
れっきとしたご褒美である。
奉仕で興奮する命令中毒のアヤヒサは、シャワーも浴びていないブツを無理矢理咥えさせられても悦び、それすら受け入れる自分を相手に見せつけてベロベロに酔うヘンタイなんよ。いやホント。
「お前は、無差別に人を操りすぎ」
「ぐ、ふ……っふ……ごほ……」
「他のはイイけどさ。ハルと、あと三人も、勝手に虐めたらダメ。虐めたい時は、俺を虐めてればいい。わかんだろ? ほら、わかれよ、なぁ、アヤヒサ」
「ンぶっ……!」
俺の股座に顔を埋めて唾液混じりの下品な声を出すアヤヒサの頭をふと強く押して、深く咥えさせてやった。
だって、返事が返ってこないから。
ジュポッ、とえぐい音がする。飲みきれないぶんは口端から溢れ、アヤヒサの顎をしとどに濡らしながらドロ……と漏れる。
それが俺の股をしめらせる。アラヤダ、パンツ濡れちゃうわ。
ゴポリとあぶくが浮かんで、押さえた頭がブルブルと酸素不足で震える。
いやいや、殺人現場じゃない。
本当にこの社長様が悦ぶプレイだ。嘘偽りなくスウィートなご褒美だ。
俺にゃあちっとも理解できねーケド、気絶するほど感じてたことがあったくらいにはアヤヒサ好みの扱いなのね。
「はは、カウパーに栄養とかあんのかな。ねーならオマエ今、マジでなんでそんなもん飲んでんの?」
ゴキュ、とアヤヒサの喉が鳴った。
ほら、感じてんじゃん。
俺はそういう記憶をちゃんと収集して、できるかぎりアヤヒサが興奮するコトをすべからく施す。
他の子も同じ。
相手に自覚があるかどうかは関係ない。俺が理解できるのは俺が見て感じた反応だから、それをする。
嫌がられたらやめるし、別に問題はねーと思う。ねーといいな。
「はっも、咲……っこんなんじゃ、ずっと、イケねぇってぇ……っ」
「んー? ん、ふふふ」
「っ、俺も、しゃぶりてぇのに……はっ……咲っ……」
そうやってアヤヒサを甘やかしていると、ふと目の前のハルが、俺の名を呼んで子猫のようにミャァンと鳴いた。
なぜそんな鳴き声を出すのかは──まぁ、お仕置きのせいだろう。
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