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 ──土曜日。  咲野はカーテンの隙間から漏れる朝日で目覚め、そっとまぶたを持ち上げる。  くあ、と欠伸をして髪を適当になでつけると、自分が生まれたままの姿であることがわかった。  昨晩、食事を終えた後に今日助と翔瑚を同時に相手してからシャワーを浴びて、ベッドで力尽きたまでは記憶にある。  アレはなかなか楽しい時間だ。  脳内レコードを再生すると、自然と口角が緩んで薄い笑みが浮かぶ。  どちらも温厚なものだから、揉めることなく咲野の体を半分ずつ担当し、舐めていた。  翔瑚に今日助の性器を舐めるよう言いつけても、特に抵抗はなく、頑張っていたように思う。  たぶん、度重なる蛇月との行為で慣れたのだ。翔瑚は意外と大胆で、気が強い。  対してされることに慣れていない今日助はずいぶん慌てていたので、咲野のモノを咥えさせることで口を塞ぐ。  今日助の口腔を責めながら、翔瑚に尻を上げて寄せるよう言いつけ、後ろを解した。  喉奥を犯すことも、固い入り口を嬲ることも、疎かにしない。  ちゃんと二人ともに声をかけて、二人ともを感じさせる。  二人の好みの言葉を選んでかけると、それぞれの魅力的な肢体がくねり、玉のような汗を浮かばせて、官能に溺れていく。  今日助のモノをしゃぶる翔瑚が下手くそなりに根気よく続けるので、ご褒美にそのまま奥まで挿れて突いてやった。  一突き一突きは大きなグラインドで。  傷つかない程度だが、雑に解した小さな後孔を裂くよう、激しく、乱暴に中を擦りあげる。  前もってベッドの上に用意しておいたオモチャ類からスパンキングラケットを取り、数を数えて振るうことも忘れない。 『イイ? 一から十まで、少しずつ強く叩く。痛くなったらやめてって言えば、俺はすぐに打つのを止めるよ。でも、十まで耐えたら……褒めてあげる』  翔瑚によく効く魔法だ。  恐らく一番恋人たちの中で痛いことが好きな翔瑚は、相反する甘い言葉をかけられながら打たれると、全身を震わせて腫れ上がった肉棒から粘液を滴らせた。  そして無自覚だが恥ずかしいことが好きな今日助には、翔瑚にしゃぶられながら、自ら両の乳頭を虐めて鳴けと言う。 『声を我慢したら、玄関ドアを開けて玄関で抱くかんね。今日助がヤラシイ顔も体も見られて感じるスケベならイイけど、それならそれで恥ずかしいんじゃね? でも、自分で乳首弄ってアンアン言ってんのも恥ずかしいか。うぅん……じゃ、生きてるだけでヤラシイじゃん』  困った顔をした今日助だが、結局従う上に興奮しているのだから、やはり咲野の見立ては正解だ。好み通りの責めを与えてあげよう。  散々搾り取って、交わる。  昨晩は、平和で淫らな夜だった。  まあ、これは珍しいパターン。  未だ眠気の冷めやらない頭をそのままに、ゆるゆると笑みを浮かべる。  理久と春木を同時に相手にした時とは、大違い。あの二人は競って乱れるので、拘束とオモチャが必要不可欠なのだ。  そして蛇月もそういうタイプなものだから、なんやかんやで平和とは程遠い行為をする羽目になるのがいつものパターンである。  なんでそういうことになるのやら。  咲野には皆目見当もつかない。  つかないが──……彼らがそれでも誰一人、歪な恋人関係にいながら、悲哀の涙を流さないわけで。  それならば、これが正解のカタチ。  常識的な人の美しい瞳がおかしいと写し取っても、咲野にとっては、これが唯一無二で不動の幸福の在り方だと深く澄んだ思考で思う。

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