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紫煙

『紫煙』 「おめぇはよ、俺のことが好きか?」 「随分不躾な質問ですね。まあ嫌いではないですよ。これだけ長い付き合いですから、何かしら愛着はあります」 「愛着ねぇ……」 吐き出された紫煙は甘い香りだ。 「俺が女とセックスしたらどう思う?」 「良いんじゃないですか。柔らかなおっぱいでも揉ませてもらえれば、少しはストレス解消になって煙草の数も減るでしょう?」 「はは、ちげーねぇな。おめぇも揉ませてもらって、その眉間の皺何とかしてもらえよ」 大口開けて笑う馬鹿はもう一度紫煙を吐き出し、更に甘い香りが部屋を充満した。 「そうですね。けれど女性は何かと面倒なので遠慮しておきます」 「おーおー、そりゃあ言えてんな。女ってのは怖ぇ生き物だもんな」 すっかりと短くなった煙草は灰皿の上で擦り消され、空いた手が僕の頬を撫でた。 「おめぇで欲情出来りゃ一番楽なんだけどなぁ」 ゴツゴツとした男らしい手は僕のそれより大きく熱い。 「全くの同感ですね。その辺の女よりは貴方の方が好きなつもりなんですけど。勃起しないんじゃセックスになりませんしね。ああ、でも……僕、貴方とのキスはそこそこ好きなんですよ?」 頬を滑る手を取って、それを軸に自らの身体を寄せた。 至近距離の瞳に笑い掛けて、肉厚の唇に口付ける。 「この甘い香り、癖になるので」 「はっ、だったらおめぇも吸えばいいじゃねぇか」 「嫌ですよ。僕は長生きしたいのでね」 「俺に早死にしろってか?」 「まさか。僕が長く味わえるように、精精長生きしてください」 【END】

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