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第3話

さぁ、と未だ降り続く雨音が嫌に耳に響く。 それは絶望の足音なのか。 「よく見てろ。この世にゃ人と化け物の他にもうひとつ、存在する。」 僧侶は右の掌を雨が降る屋外へ向けると、左手で指を動かした。 瞬間、僕は信じられない物を目の当たりにした。 「...雨が、止まった」 ーー何故。 僕は思った。 これは神の御業に違いないと。 僕は瞬きも呼吸すらも忘れて驚いた。 天より降る雨粒の時を止めた柔い様な雨水は 摩訶不思議に宙に浮き、落ちる事なく空に揺蕩っている。 「水神様、なのですか。」 他にこんな事が出来るひとを僕は知らない。 そうでなければ、人の姿をとられた神様なのかも知れない。 「惜しいな坊主。残念ながら俺は神様じゃない。だが、御力を借りて俺はこう言う事が出来た。昔からな。」 僧侶がふるりと手首を回すと、その動きに合わせてひとつの水玉がくるりと付き従った。 更にひょい、と水玉を上へ放ると僧侶が何事かを呟いた。 すると空へ放られた水玉が突如ぱちんと割れ、僕の目に鮮やかな虹を描いて見せた。 「昔からそういう奴は何処にでも居るのさ坊主。 秘匿され、恐れられ、畏れられたりしながら俺たちはほんのちょいと神の力をお借りしている。」 お前もそうだろ、と視線が問いかけてくる。 堪らず僕は彼に問いかけていた。 「僕は、"何"なんだ。あんたは僕が"何"なのか知ってるのか。」 「あぁ。多分答えてやれるぞ、坊主。」 ーーそうか、そうか。 これでやっと僕は救われる。 僕はもう消えてしまった小さな虹を頭に思い浮かべていた。 僕はもうずっとその答えを探し回っていた。 「その前に、教えちゃくれねぇか坊主。」 「何。僕が教えられる事なら何でも答える。」 ありがとよ、と僧侶が笑って言うので僕は嬉しかった。 今まで僕に微笑んでくれたのは遠い昔に僕を瞬きの間だけ愛しんでくれた母だけだったのだから。 「お前さん、何時から目が見えねぇんだ。」

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