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第3話
雑踏の中でも人がよけて通ってくれるのは、霧矢の風貌のおかげだろう。
見事にブリーチで金髪にした、ワイルドショート。
耳にいくつも飾られた、ピアス。
真夏だというのに、上から下までブラックで統一したファッション。
ぶつかりでもすれば、何と因縁を付けられるか解らない。
そんな霧矢の傍で氷を食べるほんわかした詩音は、明らかにミスマッチだ。
人々は不思議に思ったが、当の詩音が平気そうなのですぐに忘れてしまった。
「何で、泣いてたんだよ」
「何で、フラッペ奢ってくれたの」
「お前が泣いてたからじゃん」
「そう。ごめんね、ありがと」
氷を食べ終えてしまうと、詩音は再びぽろりと涙をこぼした。
「だから、何で泣くんだよ」
「言いたくない」
「言わないんなら、かき氷代よこせ」
「ケチ!」
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