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第4話

 氷代の500円が惜しかったのか、それとも誰かに話したかったのか。  詩音は、ぽつりぽつりと語り始めた。 「僕、今夜は知成(ともなり)とデートだったんだけどね」 「お前、あいつと付き合ってたのか?」 「知らなかった?」 「ん? あぁ」  とにかく、デートだ。  知成は、せっかくサマーフェスティバルで花火を見るんだから、浴衣を着て見せて欲しい、と詩音にリクエストした。 「僕、はりきって浴衣買って。下駄も履いて。それで、待ち合わせの場所に来たんだ」  人ごみの中でも、詩音は知成の姿をすぐに見つけた。  嬉しくって、駆けだした。 「そしたら、思いっきり転んじゃって……。そしたら、知成が……」

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