6 / 20

第6話

「だって、下駄なんか履いたことないんだもん。誰だって、転ぶよ。普通」 「もう、泣くな。奢ってやるから」 「ホント!?」 「ああ。好きなもん、何でも言え」  やったぁ、と詩音はようやく立ち上がると、霧矢の手を引いて広場を巡り始めた。  綿菓子、唐揚げ、リンゴ飴。  ダーツに、ヨーヨー、金魚すくい。 「ね、あとアレが飲みたい」  そこには、色とりどりのカクテルが並んでいた。 「酒はダメだ。俺たち、まだ未成年だろ」 「だから、飲んでみたいんじゃん」 「飲むなら、お前だけ。俺、バイクで来たからな」 「一人で飲んでも、つまんない」 「じゃ、やめとけ」  意外だな、と詩音は思った。  ワルの霧矢くんなら、カクテルくらいがぶがぶ飲みそうなのに。

ともだちにシェアしよう!