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第7話
そんなやりとりの中、日は暮れて照明が灯り始めた。
屋台によって、明かりの色が微妙に違う。
まるで幻燈の中を歩いているようだ。
「あぁ! 楽しいな!」
「そろそろ、花火が始まるぞ。席、取ろうぜ」
霧矢は立見席ではなく、わざわざチケットを買って座席に詩音を座らせた。
「えっと。あの……」
「何だよ」
「いいのかな? 指定席のチケット、2000円もするのに」
「別に」
「僕、立ち見でも構わないよ?」
「足、下駄で痛いだろ」
「あ……」
鼻緒擦れで、ひりひり痛む詩音の足までお見通しの霧矢だ。
不愛想だが、口数は少ないが、ぶっきらぼうだが、霧矢の心には確かに優しさが宿っていた。
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